31日、埼玉初中で行われた緊急保護者説明会

10月から施行される幼保無償化制度から、朝鮮幼稚園を含む各種学校認可の幼児施設が対象外となっていることと関連し、現在、各地では相次いで対策委員会が発足され、「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、連絡会)との連携のもと、学校関係者や保護者らを中心とした緊急保護者説明会(8月31日・西東京第2初中、埼玉初中、1日・鶴見幼稚園)が行われるなど、日本政府が主導する同制度の差別是正を求め、抗議運動が活発化している。(韓賢珠、丁用根)

保護者連絡会立ち上がる/埼玉初中

8月31日、埼玉初中で同校所属幼稚班に子どもを送る保護者を対象とした緊急保護者説明会が開かれた。

 説明会には、同校の鄭勇銖校長、幼稚班の朴洋子主任をはじめとする教員、保護者、埼玉地域の専任活動家ら約50人が参加した。

説明会ではまず、連絡会の宋恵淑代表が講演を行った。

宋代表は、「朝鮮幼稚園の保護者の立場から、皆さんとこの問題について考えていきたい」とあいさつした後、幼保無償化制度から朝鮮幼稚園が対象外となる経緯について詳細に説明。

そのうえで、これまで連絡会を中心に行ってきた日本政府の方針に対する対応策や、今後の運動方針について言及した。

講師を連絡会の宋恵淑代表が務めた。(写真右)

また宋代表は、8月29日付の埼玉新聞で紹介された「志木市における対象外施設への保育料全額補助」の動きについて紹介しながら、こうした取り組みについて、朝鮮幼稚園が所在する自治体へアピールするなど「地方レベルで行う運動の重要性」について強調。

一方で、各種学校として保護者補助金が出ていない自治体についても、「幼保無償化の問題と足並みを合わせ、地域や学校単位で積極的に働きかけていこう」と参加者らへ呼びかけた。

講演の結びとして、「各種学校である朝鮮幼稚園という体系は守らなくてはならない」と、各種学校認可を獲得してきた朝鮮学校の歴史的経緯と、その重要性について強調した。

宋代表は「各種学校認可はこれまで先代たちが獲得してきた民族教育の権利だ。

認可をうけて、その地位を得て、高野連の出場や定期券の問題など、教育の諸権利を一つ一つ獲得しての今がある。

朝鮮学校をとりまき、削減、停止、除外の声しか聞こえないなか、今まさに先代たちのように団結し、知恵を出していかなくてはならない」と訴えた。

その後、質疑応答の時間が設けられた。

質疑応答のようす

保護者からは「各種学校の意味をもう一度詳しく説明してほしい」「私たちオンマにもできることはどのようなものがあるか」などさまざまな質問があがった。

宋代表は「まずは、何が不当であるか知識を共有すること、そのうえで保護者たちが主体となりこの問題に声をあげていこう」と話した。

一方、この日の説明会では、「幼保無償化を求める埼玉朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、埼玉連絡会)が発足され、共同代表に、同校アボジ会責任者の尹致力さん(38)、オモニ会責任者の金初美さん(42)が選出された。

(*愛知でも8月26日に保護者連絡会が発足している。

) 続いて、さいたま市長宛の要請書を尹致力共同代表が読み上げた。

説明会の結びとして、発言した全国連絡会メンバーで埼玉連絡会役員の金淳華さんは「この間、担当省への要請などに参加しながら、小さな子どもたちに差別をしてほしくないと強く思った。

この問題を決して容認してはいけない」とし、地域一丸となり声をあげる必要性を説いた。

要請行動に参加した保護者が報告を行った

埼玉連絡会の金初美共同代表は、今回の無償化除外と関連し「対象から朝鮮幼稚園が外された理由がまったくわからない。

政府は多種多様な教育がダメだというが、それの何がいけないというのか。

朝鮮幼稚園は、きちんとした保育カリキュラムのなかで、幼児教育が行われている。

こうなった以上、声をあげ闘うしかない」と怒りをあらわにした。

「正直また除外なのかと思った」と当初の思いを語ったのは、ポンソナ班(年中クラス)のオモニ責任者をつとめる鄭悠理さん(36)。

鄭さんは、「今日の説明会に参加して小さな希望が見えた気がする」と思いを明かした。

閉会のあいさつをする金淳華さん

「小さい子どもが居るオモニたちは、集会などに参加するのも容易ではなく、何か私たちでもできることはないかと考えていた。今日説明を聞きながら、例えば学校でキムチ販売をするときも、この問題について話してみたり、近所のスーパーなどでも、買い物ついでにチラシを配ったり、身近にできることがあることに気づいた。待つだけじゃなく、子どもたちのために全力で動いていきたい」(鄭さん)

チンダルレ班(年長クラス)に子どもを送る金永諫さん(41)は「幼保無償化がうたう『すべての子どもたち』の中に自分の子どもや朝鮮幼稚園に通う園児たちが含まれていないことに悔しさと悲しさ、そして強い憤りを感じる」とし「この問題の不当性を感じて声をあげてくれる日本の方々もたくさんいる。保護者をはじめとした同胞らと応援してくれる人たちが力を合わせて、幼保無償化の権利獲得のために頑張りたい」と力を込めた。

(賢)

園と保護者が協力を/鶴見朝鮮幼稚園

鶴見朝鮮幼稚園で幼保無償化問題に関する保護者説明会が行われた

学校法人神奈川朝鮮学園が運営する鶴見朝鮮幼稚園(横浜市)で9月1日、幼保無償化問題に関する保護者説明会が行われた。

幼保無償化問題の経緯について説明した同園の徐怜愛教員は、10月1日から施行される幼保無償化から鶴見朝鮮幼稚園を含む各地の朝鮮幼稚園が対象外となっていることについて言及。

対象外となる家庭も負担する消費税の増税分を財源としていることや「すべての子ども」に対する支援施策をうたいながら各種学校という理由で対象外となることなどについて述べ、その不当性を強調した。

説明会では神奈川中高教育会の朴載守副会長、同園の尹守枝園長もそれぞれ発言した。

保護者らは「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」が作成したリーフレットに目を通しながら、真剣な面持ちで説明会に参加していた。

ある40代同胞女性(横浜市在住)は自身の子どもが通う幼稚園が幼保無償化の対象外となったことについて「悔しい思いでいっぱいだ」と心境を吐露しながら「保護者たちがこの問題についてしっかりを学んでいかなければ」と話した。

この日、説明会終了後にはアボジ会主催の夏行事が行われ多くの園児たちや保護者でにぎわっていた。

アボジ会責任者の高済虎さん(39)は行事を楽しむ園児たちの姿に目を細めつつも「幼保無償化問題について保護者たちが子どもたちのためにできることは何かを考えなければならない」とし、「幼保無償化もわれわれの当然の権利。

子どもたちのために保護者と園がしっかりと協力して問題に取り組みたい」と力を込めた。

同園では9月中にも2回目となる説明会を開き、より多くの保護者らにこの問題を周知させていく考えだ。

幼保無償化問題をめぐって神奈川県では、県下の女性同盟各支部が運営する子育てサークル「キッズ」の責任者らを対象とした説明会が7日に川崎初級で行われる予定。

尹守枝園長は高校無償化のみならず、民族教育の「入り口」である朝鮮幼稚園にまで差別の矛先が向いていることについて強い憤りを示し「まずは幼稚園の教員たちがしっかりと問題について理解することが重要だ。

そのうえで説明会などを通じて保護者たちの関心をよりいっそう高めていきたい」と述べた。

(根)

各地での取り組み

  • 保護者説明会は、今後、7日に東京第6初級、西東京第1初中で、14日に京都府下の朝鮮幼稚園、28日に名古屋初級、東春初級で行われるなど、各地の対策委の動きと連動し行われる。また、神奈川では県下子育て支援サークル「キッズ」の責任者らを対象に説明会(7日)が、西東京第2初中では全保護者を対象とした講演会が22日に催される予定だ。
  • その他にも、西東京では、8月21日、高校無償化適用を求める福生駅前での「水曜行動」の場で、連絡会が作成した幼保無償化に関するリーフレット220枚を配布。今後、国立駅(4日)、調布駅(18日)前でもリーフレットを配布する一方、大阪でも12日、13日、18日に地域別街頭宣伝を企画している。また、東京、大阪(どちらも26日)や愛知(10月3日)では抗議集会やデモ行進などを予定しており、この問題へのさらなる関心喚起のため、より多くの同胞らへ参加を呼びかけている。