約5,500人の同胞らが抗議の声をあげた「11.2全国集会」(19年11月2日)

朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校が幼保無償化の対象外とされてから、およそ2年半が経過した。保護者や学校関係者らによる絶え間ない働きかけによって、国は対象外施設への支援事業を打ち出すに至り、一方の地方自治体も、手上げ方式で推進される同事業について、これまでに多くの自治体が手上げするなど、状況は大きく変化している。しかし他方では、朝鮮幼稚園など各種学校認可の外国人学校幼稚園はいまだ制度そのものの対象でないことや、地方自治体の対応に差があることで、支援対象とそうでない対象が生まれるという新たな「差別」の形が生産される現状もある。新連載「朝鮮幼稚園除外問題の現在地」では、19年10月から始まった幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外問題を改めて振り返るとともに、朝鮮幼稚園をめぐる同制度の現状について確認する。全4回。

2019年10月、幼保無償化制度がスタートした。それから約2年半の間、日本各地から集まった約5,500人の同胞らが抗議の声をあげた「すべての幼児に教育・保育の権利を!11.2全国集会」などの集会や各地での街頭宣伝活動、昨年4月までに日本の国内外から107万筆の賛同を集めた署名運動など、様々な運動が展開されてきた。

19年10月の制度施行に先立ち、各地では同年夏に緊急の保護者会議が開かれる。(写真は埼玉朝鮮幼稚園)

しかし「朝鮮幼稚園幼保無償化適用!」という話は一向に聞こえてこない。かわりに囁かれているのが、「がんばったけど、結局朝鮮幼稚園は支援の対象外で、仲間はずれのままなんでしょう?」という諦めの声だ。

しかし、今こそ声を大にして言いたい。朝鮮幼稚園の子どもたちも、国による支援の枠組みのなかに入りましたよ、と。

朝鮮幼稚園が所在する17都府県の保護者らが行った関係府省への要請(19年9月26日)

一体どういうことなのか。この間、朝鮮幼稚園は、日本政府に対し、幼保無償化制度の基本理念に立ち返り無償化を外国人学校幼稚園にも適用するよう求めながらも、それには法改正が必要というハードルがあることを鑑み、それを実現させるまでの間、政府が検討している無償化制度の対象外施設に対する「支援策」を外国人学校幼稚園にも講じるよう、関連府省や国会議員などへ要請を重ねてきた。それと並行して、「支援策」を形作るために文科省が昨年度実施した自治体委託公募型の「調査事業」において、朝鮮幼稚園の園児が居住する自治体が調査委託先となるよう、朝鮮幼稚園の保護者らが中心となり自治体や地方議員に対して働きかけを行った。その結果、いくつもの自治体が朝鮮幼稚園を調査委託先として選定された。1年かけて「調査事業」が実施され、朝鮮幼稚園の保護者の声が自治体にも、国にも反映されたのだった。

外国人学校幼稚園を幼保無償化の対象とするよう求める内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣宛ての要望書と署名を提出する朝鮮幼稚園の関係者たち。(20年6月15日)

このような地道で粘り強い活動が実を結び、日本政府が制度設計し今年度より実施している子ども子育て新制度(幼保無償化制度を含む)のなかの、「地域における小学校就学前の子どもを対象とした多様な集団活動事業の利用支援」(「支援事業」)という支援制度が、朝鮮幼稚園の子どもたちにも適用されることとなったのだ。

すなわち、朝鮮幼稚園は、日本政府から名指しで幼保無償化の対象外施設として支援の枠外に放り出された状況から巻き返し、「支援事業」の対象として国の子ども子育て支援制度の枠内に入り、その結果、支援の対象になった。

(幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会・宋恵淑)