孫美香さんと川崎初級付属幼稚班の園児たち

朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校が幼保無償化の対象外とされてから、およそ2年半が経過した。保護者や学校関係者らによる絶え間ない働きかけによって、国は対象外施設への支援事業を打ち出すに至り、一方の地方自治体も、手上げ方式で推進される同事業について、これまでに多くの自治体が手上げするなど、状況は大きく変化している。しかし他方では、朝鮮幼稚園など各種学校認可の外国人学校幼稚園はいまだ制度そのものの対象でないことや、地方自治体の対応に差があることで、支援対象とそうでない対象が生まれるという新たな「差別」の形が生産される現状もある。新連載「居場所を守る人々~幼保無償化に思う~」では、幼保無償化適用をめぐるこれまでの取り組みや、現在の制度のあり方について、朝鮮幼稚園に送る保護者や教員など関係者らの声を紹介する。全4回。

地域社会全体で愛情注ぐ

幼保無償化の対象外施設に対し行われる支援事業は、該当施設における保育士の配備が条件となる中、孫美香さんは、昨年に保育士資格を取得。同校付属幼稚班の事業適用を手繰り寄せた一人だ。

朝大外国語学部を卒業後、朝鮮青年社を経て現在の職場につとめた背景もあり、当初は「自分には難しい」と保育士試験に対して消極的だったという。しかし近年、朝大保育科出身の卒業生や孫さんの周辺で後輩教員が資格を取得したのを機に一念発起した。とりわけ、街頭署名などに多くの保護者や支援者らが参加するのを見た時、「たくさんの方々が頑張っている分、自分は保育士資格を取得して貢献しなくては、と思った」と孫さん。

支援事業について「月額の上限を見ても幼保無償化の対象となった施設と差がある。『すべての子どもたちの健やかな成長』の為の施策とうたうなら、国や地方自治体には本当にそれを実践してもらいたい」と歯がゆさをにじませながらも、多くの人々のたゆまぬ努力によって今があると希望を見出す。

現在各地の朝鮮幼稚園では、日本の幼稚園教育要領・保育所保育指針に示されたねらいや内容、領域が意識され、「生きる力」を育む教育・保育を行う。また、保護者たちや地域の同胞たちの支援により定期的な園内美化活動や、園児らの健康・安全面に配慮した教室・遊具の整備などが行われる。とりわけ、川崎でも「今以上に多くの体験と充実した保育を」との方針から、スイミング教室や英語教室、来年度にはリトミック教室とテコンドー教室を開設するなど、育ちゆく同胞児童らのより良い保育環境を整えるために、学校関係者らは日々試行錯誤している。

孫さんは、朝鮮幼稚園の魅力について「アイデンティティは小さい頃から自然と身につけていくことがとても大切で、ユチバン(幼稚班)では保育(生活)の中で自然とそれを育むことができる。そして家庭と学校(園)、同胞コミュニティというように地域社会全体で子どもたちに愛情を注ぎ、育てている。安心・安全・健やかに過ごせるかけがえのない場所」だと強調した。

「子どもたちに、たくさんの愛情が注がれた学校を大切にする気持ちを伝え、安心して過ごせる環境とよりよい保育の場を提供できるようこれからも頑張っていきたい」

(韓賢珠)