朝鮮学校問題についての報告も

「国連人権勧告の実現を!-すべての人に尊厳と人権を-」と題した院内学習会が1日、参議院議員会館で行われ、約70人が参加した。集会は「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会が主催した。

参議院議員会館で院内学習会が行われた

同実行委は、さまざまな人権課題に取り組んでいる個人や市民団体により2013年に発足されて以降、日本政府に対し国連人権勧告を遵守することを求める集会やデモ、学習会を毎年開催し、人権問題克服のための取り組みを活発に展開してきた。

「日本の人権問題を解決するために何が必要か」をテーマに開かれたこの日の学習会では、コロナ禍で浮き彫りとなっている日本の人権課題について考えるとともに、その解決のための方策や活動方針が示された。

学習会ではまず、神奈川大学名誉教授の山崎公士さんが基調講演を行った。

山崎名誉教授は日本の人権問題の解決に向け「今使える手段はなにか、どんな仕組みが求められるのか」という問題提起に始まり、人権条約に認められた権利を侵害された個人が、各人権条約の条約機関に直接訴え、国際的な場で自分自身が受けた人権侵害の救済を求めることができる「個人通報制度」の活用や国内人権機関の設立をはじめとする新規制度導入の可能性などについて言及した。

つづいて、個別の人権問題について3人のスピーカーが発言。はじめに、在日本朝鮮人人権協会の宋恵淑さんが「深刻化する朝鮮学校差別」をテーマに報告を行った。

宋さんは、朝鮮学校児童・生徒らに対する暴言・暴行事件、大学入学資格問題、朝鮮学校への補助金や財政的補助や「高校無償化」制度からの除外などをめぐり、1990年代から子どもの権利委員会や人種差別撤廃委員会が日本政府に対し差別是正勧告を繰り返し行ってきたことについて言及。にもかかわらず日本政府がそれらの勧告を無視し、人権条約に違反しつづけてきたと非難した。

人権協会の宋恵淑さんが朝鮮学校問題について報告を行った

そのうえで、昨年さいたま市が備蓄マスク配布対象から埼玉朝鮮幼稚園を除外し、また「学生緊急給付金」の対象から朝鮮大学校の学生たちが除外されたことについて触れ、朝鮮学校をめぐる日本政府の不誠実な対応がコロナ禍における新たな朝鮮学校差別を生む原因となっていると強調した。

一方で、昨年朝鮮幼稚園をはじめとした外国人学校への「幼保無償化」制度適用のために関係者らが運動を活発に展開した結果、朝鮮幼稚園が制度適用外となった施設に対する「新たな支援策」の「調査事業」の対象となり、ことし4月には新たに調査対象類型として「外国人学校を主たる対象とするもの」が加わるなどの成果がうまれたことに触れ「絶えず声を上げ続けることが差別是正につながる。民族教育の権利が保障され、子どもたちが安心して朝鮮学校に通えるよう、日本の方々と手を携えて一歩一歩前進していきたい」と力を込めた。

つづいて、鳥井一平さん(移住者と連帯するネットワーク)が「入管法改悪と人権侵害」、本山央子さん(アジア女性資料センター)が「コロナ禍とジェンダー」をテーマにそれぞれ報告。また、諸団体の関係者らが登壇し、精神障害者に対する人権侵害や婚外子差別、学校における「日の丸・君が代」起立斉唱問題などについてのアピールを行った。

学習会ではその後、質疑応答や今後の運動方針提起などがあった。また、国連子どもの権利委員会の大谷美紀子委員長へ送る書簡が、学習会参加者一同の名義で採択された。

この日、学習会には立憲民主党の水岡俊一参議院議員、岸真紀子参議院議員、川田龍平参議院議員、社民党の福島瑞穂参議院議員らも参加し、それぞれ発言。学習会参加者らに連帯の意を表しながら人権課題の克服に向けた取り組みを積極的に行っていく決意を語った。

(丁用根)