今週以降、要請団続く

東京・西東京地域にある朝鮮幼稚園の関係者や保護者らによる要請団が25日、朝鮮幼稚園への無償化適用を求める署名約1万6千筆と要望書を、関係府省へ提出した。

幼児教育・保育の無償化制度をめぐり、東京・西東京地域にある朝鮮幼稚園の関係者や保護者らによる要請団(「東京・西東京要請団」)が25日、朝鮮幼稚園など各種学校認可の外国人学校幼児教育・保育施設に対し無償化適用を求める署名約1万6千筆と要望書を、関係府省へ提出した。署名は、昨年末からスタートし5月末時点で46万人以上が賛同した「100万人署名運動」を通じて東京・西東京地域の同胞や日本市民らが集めたもの。今週以降、各地の要請団がこれに続く予定だ。

差別なくすための行政を

この日提出された署名は約1万6千筆だった。

要請冒頭、「東京・西東京要請団」の参加者たちは、署名と要望書を提出。国からは、内閣府、文部科学省、厚生労働省の担当職員が応対した。

提出された要望書は、▼各種学校を無償化対象と認め、朝鮮学校幼稚部のすべての園児たちの保育料を無償化とすること、▼当面、各種学校の幼児教育・保育施設を幼児教育類似施設等の新たな支援対象として認めることを求めた。

紹介議員として同席した立憲民主党の大河原まさこ衆院議員

要請の紹介議員として同席した立憲民主党の大河原まさこ衆院議員は「幼保無償化について政府はすべての子どもたちにと言ってきたが、いまだに外国人学校は除外している。同じ消費税を払いながら、不平等で不誠実な対応だ」と指摘。また国が対象外施設への支援を検討する目的で行う調査事業について触れ「いまどのような状況で議論がなされているのか聞きたい。一日も早くあらゆる差別をなくすような行政を進めてほしい」と述べた。

つづいて「東京・西東京要請団」の参加者たちが順に発言した。

東京第6初級の呉英哲校長

東京第6初級(東京都大田区)の呉英哲校長は「今日ここに来るにあたり、園児たちが楽しく学ぶ姿を改めてみてきた」とし「日本で朝鮮民族のアイデンティティの基礎を築く幼稚園という場に通いながら、受けてはいけない差別をうけている。多文化共生をうたうなら、それにそった対応をしてほしい」と訴えた。

東京第1初中附属幼稚班の韓永心主任

荒川区にある東京第1初中附属幼稚班の韓永心主任は、署名を集めるために街頭に立ってきたこれまでを振り返り、「幼保無償化を求め声をあげる子どもたちに、仲間外れはいけないよねと賛同してくれた市民たちが多くいた。私たちはあきらめていない。今日提出された署名は、そんな皆の思いがつまった署名だ」と強調した。

西東京第1初中附属幼稚班の方香織主任

「いつまで続けなければいけないのでしょうか」

涙ぐみながらそう訴えた西東京第1初中附属幼稚班(東京・立川市)の方香織主任。方主任の発言に、会場に集まった参加者たちは、同じように憤りを募らせ目頭を熱くした。

「私たちの幼稚園の隣にも保育園がある。そこに通う園児たちと何ら変わりない子どもたちの笑顔が私たちの幼稚園にもある。そのことをしっかりと受け止めてほしい。私たちは適用されるまでこの闘いを続けると決心している」(方主任)

“止まらずに動いて”

宋恵淑さん

保護者たちの発言が続いた。

東京第6初級保護者で幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会の宋恵淑代表は、新型コロナウイルスに伴う日本政府の休業要請に、他の施設同様に朝鮮幼稚園も従ってきたことに言及。

そのうえで「朝鮮幼稚園では、休校措置が取られた期間、各地にひろがるネットワークの強みをいかし、先生たちがお遊戯や手遊びの動画を配信し続けてくれた。こんな素晴らしい幼稚園をなぜ除外するのか」としながら、多種多様な学びの場を尊重するよう、幼保無償化制度の再考を求めた。

西東京第2初中附属幼稚班(東京都町田市)の保護者である梁淳喜さんは、「昨年の9月以降、何度もここにきて要請をしてきたが、正直にいうと、もうこの件でこちらに伺うのは終わりにしたい」ともどかしさをあらわにした。梁さんは、「子どもたちの学びは無条件保障すべきだ。次からは明るい話をするためにこの場所を訪ねたい」と訴えた。

左から梁淳喜さん、黄琴実さん、李春香さん

「この問題に興味を持って欲しくて、同じ子育てをする日本の友人たちに話をしても、『日本の幼稚園じゃないからしょうがないよね』という返答がほとんど。何が差別かというのがわかっていない」

そう話すのは、西東京第1初中保護者連絡会代表の黄琴実さん。黄さんは同制度の欠陥に対する社会的な認識が依然乏しい中、差別反対という言葉を発することの心的な負担を訴えながら「ここに参加しているオモニたちは皆、毎日一生懸命こどもたちを育てている。除外される理由は一つも見当たらない」と語った。

また西東京第2初中保護者連絡会代表の李春香さんは「この状況をいつか子どもたちに教えなくてはならないと思うと本当に心が苦しい。私たちはこうして動いている。文科省の方々も止まらずに動いてほしい」と訴えた。

左から東京朝鮮学園の李英順さん、金順彦理事長

東京朝鮮学園の李英順さんは、応対する職員たちに対し「要望や声を聞くことに慣れっこにならないでほしい。制度に誤りや落ち度があればいくらでも修正できるはずだ」と強く訴えかけた。

李さんは、対象外施設への調査事業についても触れ「自治体委託型の調査事業だが、手上げ方式のこれは、各自治体が助成を行う施設を中心に対象選び、手上げしているため、最初からはじかれる朝鮮幼稚園もある」と指摘。既存の助成有無は別として事業を遂行するよう強調した。

東京朝鮮学園の金順彦理事長は「1948年の4.24教育闘争のときもそうだが、長い間民族教育に対する差別が途絶えたことがない。在日朝鮮人は生まれて社会に出るまでこのような環境にある」とし「これまで進展がないのは、在日朝鮮人に対する差別に無視を貫き通す、そのことを象徴している」と語気を強めた。

(韓賢珠)