25日に行われた東京・西東京地域の朝鮮幼稚園関係者による要請活動

たくさんの関係者が足を運ぶなか、市議や日本の市民団体も駆けつけ共に声をあげた。

参加した上村和子・国立市議は、同市における朝鮮学校保護者への補助金継続に尽力してきた一人。国立市では昨年、国による幼保無償化を受けて、対象外と判明した朝鮮幼稚園を含め外国人学校幼稚部に通う市内在住の保護者にも、保護者補助金の支給を決めている。

上村和子・国立市議

そのきっかけとなったのが、幼保無償化を求める運動を通じ、保護者らが市に対し要請を行い、国立市長が西東京第1幼稚園を訪問したことにあった。

上村市議は、同市におけるこれらの取組を紹介しながら「何も特別なことではない。幼保無償化の根拠法である、子ども子育て支援法の精神に則り行われたものだ」と強調。そのうえで、日本政府が推進する同制度の根本が何であるのか、そのことについて改めて指摘した。

「幼保無償化は、保護者の負担軽減と、子どもたちの生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の大切さに基づいて無償化することにある。では朝鮮学校など日本に暮らす外国籍の子どもたちの人格形成の基礎を培う幼児教育は何なのか。その人格形成を朝鮮幼稚園でしているではないか」(上村市議)

さらに上村市議は「市はこれらの法律に則り補助金の交付要綱改正をしたが、その法律どおり行われていない国の制度は違法行為ではないか」と強く非難しながら「調査事業に手を挙げた自治体はすべて調査対象にしてほしい。そして今後、調査対象が判明すれば、対象に外れた自治体と対象となった自治体、その差はどこにあるのか。説明責任をしっかりと果たしてほしい」と述べた。

“このままではいけない”

朝鮮学校と共に・「練馬の会」の林明雄さん

2010年以降、練馬地域の日本市民を中心に、高校無償化反対などを求める街頭行動を行ってきた朝鮮学校と共に・「練馬の会」の林明雄さんは「街頭で出会う方々からは、幼保無償化のようなひどい差別を許してはいけないという声を多く聞いている。政府のやり方は、国のうたう多文化共生とは真正面から反するものだが、多文化共生という言葉を一体どのようにとらえているのか。具体的にどのように政策として実践しているのか問いたい」と迫った。

「ハムケ・共に」のメンバー・猪俣京子さん

2007年、西東京地域の朝鮮学校を支援するため結成されたネットワーク「ウリの会」に参加する市民団体「ハムケ・共に」のメンバー・猪俣京子さんは「政府や自治体が何もしないなら、市民がこの状況を変えていこうと始まったのが『ハムケ・共に』」だと自身が携わる団体の結成経緯について触れた。

猪俣さんは「幼保無償化を担当する行政の人々は、この制度の何が差別なのか、しっかりとわかるべきだ。もしわからないなら、それは在日朝鮮人の人々がどういう思いでいるのか、思いを馳せようとしないから。そんなことではいつまで経ってもわからない。このままではいけないでしょう」と語った。

朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会の長谷川和男代表、田中宏代表

また、朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会の長谷川和男代表は「子どもが学ぼうとするのに、国籍や施設形式などで教育をうける権利が異なるのは教育の冒涜。行政が政策を遂行するためには、現場で教育をみるべきだ」とし、同じく同連絡会の田中宏代表は「日本の国際人権レベルは、世界から恐ろしくひんしゅくをかっている。国連が採択した9つの人権条約のうち、移住者に関する条約以外、日本はすべて批准している」としたうえで、にも関わらずいまだ高校無償化をはじめ、公的な差別政策を継続していることに警鐘を鳴らした。

誠意ない対応に非難の声

応対した職員たちは「共有させていただきます」との言葉を繰り返した

「共有させていただきます」―。

関係者たちの発言を受け、応対したすべての職員が、まるで定型文を読むかのように回答した様子に、会場からは厳しい批判の声があがった。

あまりにも誠意のない職員たちの態度に、会場からは非難の声があがった。

上村市議は「省内で共有するとはどういうことか。何をするのか説明してほしい」と追及。

「共有以外の言葉はなかなか難しい。シェアするということです」(文科省職員)

厳しく非難する上村和子・市議

文科省職員の返答を受け、上村市議が言葉を続けようとすると、それを遮り同職員が「最後の意見をお伺いします」と発言する一幕もあった。

上村市議は「職員がこういう答え方を市民に向けてしてはならない。共有するというのは、ここに来た当事者の人たちに何をすることになるのか。『持ち帰り、その結果をお知らせします』と、これが役所のとるべき基本的スタンスだ。国会で聞かれないと答えないのか」と、職員らの対応を厳しく非難。

一連のやり取りをみた保護者たちは「もちろん立場上言えないことだってあるはず。それはわかっている。けれど要請中ずっと下を向いていて、しまいには発言を遮るって。行政として誠意がみえないことに失望した」と口をそろえた。

(韓賢珠)