朝鮮幼稚園など各種学校認可の外国人学校幼児教育・保育施設に対し、幼保無償化の適用を求めて行われた15日の関係府省に対する要望書と署名の提出。昨年の制度施行からすでに8ヵ月が経過し、日本政府は対象外施設への支援策を講じるとして3月から調査事業を始めたが、対象外となった施設全般を救済するための具体策はまったく示されていない。公には多種多様の必要性を唱え、皆が平等に負担する消費税を財源とした同制度においては多種多様を理由に外国人学校を排除する。日本政府の排他的な一連の対応に批判の声は高まるばかりで、この日提出された署名賛同数は延べ46万を超える膨大な数となった。

深く根付いた差別意識

発言する「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表

要望書と署名提出後に行われた記者会見では、まず、フォーラム平和・人権・環境の藤本泰成代表が、昨今の新型コロナに伴う日本政府の支援策のうち、教育分野への支援における各種学校排除の実態について報告した。藤本代表は「休業要請は各種学校にも同様にしているのに、学生支援緊急給付金など支援の対象からは外される。各種学校外しは、なぜ当然化されるのか」と日本政府が休業要請を求める一方で、朝鮮学校を補償からは排除するという矛盾について指摘した。これと関連し、朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会の田中宏代表は、同給付金の対象から朝鮮大学校を除外したことに「結局根付いているのは『朝鮮人差別』でしかない」と呆れた口調で話した。

また「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表は、調査事業において「自治体が選定した朝鮮幼稚園のうち、ひとつでも調査対象になると信じている」と述べる一方で、「予想以上の自治体が朝鮮幼稚園を含め応募したが、本来であればもっとたくさんの自治体が応募できたはずだ。国が態度を改めない限り、差別はひろがる」と国が明確な救済をせず、地方自治体に判断を委ねることで生まれる差別について指摘した。

西東京第2幼稚園保護者であり朝鮮大学校で教師を務める趙丹さんは、あらゆる教育支援制度から各種学校を排除する日本政府の対応に「いろんな理屈を述べているが、それらはすべて朝鮮人差別をしている事実を隠すお決まりのパターンだ」と皮肉った。さらに、朝大が高等教育機関として遜色ない教育を行っていると言及しながら「ぜひ学校の教育実態を取り上げて判断ほしい」と思いをぶつけた。

埼玉朝鮮幼稚園の朴洋子園長は、今年3月に朴園長がさいたま市に直接問合せたことで判明した市のマスク不配布問題に触れながら「マスク不配布問題が報道されてから本当に多くの方から寄付などが届いた」とマスコミや世論の持つ力について改めて強調。

また、朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会の長谷川和男代表は、朝鮮学校の現状を日本人がもっと知る必要があると話したうえで「コロナ対策で朝鮮学校を排除することは直接的な朝鮮学校つぶしだ」と鋭く指摘した。

最後に、日朝学術教育交流協会事務局長で公立高校で教諭を務める嶋田和彦さんは、過去、朝鮮学校の生徒に授業をする機会があったことに触れ「何十年も朝鮮学校と関わってきたが、直接生徒らと触れ合ってみてはじめてわかる」ことがあったと、実際にふれあい知ることの重要性を説いた。

多種多様な教育を尊重し無償化すること、経済的困難にある学生への支援―。これらの支援策がすべての子ども、すべての学生に施されない現状は、各制度の趣旨や理念を踏まえると異常であることがより際立つ。国をはじめ日本社会にいまだ根強く残る「朝鮮」への差別意識を取り除くことが喫緊の課題だ。

(金紗栄、韓賢珠)