朝鮮幼稚園に幼保無償化適用を求める「100万人署名運動」が各地で繰り広げられている中、大分では3月31日までに3万4796筆の署名が集まった。この数字は大分県人口の約3%にあたる。この間、総聯大分県本部は広範な人々の関心を喚起するために、総聯本部管下の各団体に呼びかけるだけでなく、日本市民団体への協力の要請を積極的に行った。
総聯大分県本部は、今回の署名運動を通じて朝鮮学校の存在、とりわけ隣県の福岡県にある朝鮮学校の現状を知ってもらい、差別問題に抗議する大分県民の声を高めるべく、平和運動センター、自治労、部落解放同盟、県教組、高教組、連合大分、社民党などの団体を訪問。各団体の責任者らに、朝鮮幼稚園が幼保無償化制度から除外された不当性について説明し、署名運動を広く展開していくことを求めた。その後も各団体と密に連絡を取りながら、署名運動の推進状況の把握、督促に努めた。
平和運動センターでは、大分市と別府市の加盟組織17団体に署名運動への参加を呼びかけた。同センターの姫野正二事務局長(62歳)によると、高校無償化問題をはじめ朝鮮学校に対する差別を是正するための取り組みは過去にも行ってきたが「幼保無償化問題にはこれまで以上に関心が集まった」という。
「消費税の納税義務を果たしているにもかかわらず、子どもたちの学ぶ権利が奪われている。その矛盾に怒りや疑問を抱く組合員らが多かった。差別の矛先を幼児にまで向けるなんて、あってはならないことだ。日本は他国に比べて人権意識で劣っているし、閉鎖的に思える。それぞれの国の歴史や文化を理解し、違いを認め、尊重し合える社会を作っていかなければならない」(姫野事務局長)
大分県教組の迫圭吾書記長(46歳)は総聯本部から署名運動に関する話を受けた際、「ぜひとも手伝わせてほしい」と言って快諾したと話す。署名運動は県教組から各地域の支部、支部管下の学校へとが広がっていった。
「安倍政権のもとで朝鮮学校への差別が強まり、日本の教育現場への介入も顕著に表れている。教科書を見ると、『従軍慰安婦』や『侵略戦争』などに関する言及が無くなり、戦争を賛美する内容が目につく。このままでは、権力の不正に対して声を上げる風潮が無くなってしまうのではないか」
そのように危機感を募らせる迫書記長は「朝鮮学校について知らない教員、児童たちはまだまだ多い。朝鮮学校や幼稚園に通う同じ年ごろの子どもたちが、なぜ辛い目に会っているのか。そのことに気づくきっかけを、今後も与え続けていかないといけない」と語った。
総聯大分県本部は今後、署名運動の賛同団体らと定期的に連携を取り合う協議会を発足するなどして、民族教育権擁護運動を継続して繰り広げていく事業体系を築こうとしている。
(李永徳)