3月24日に行われた立憲民主党主催のヒアリング

幼保無償化と関連し、対象外施設に対する「国と地方自治体による支援の在り方」を検討しようと、制度の追加措置となる調査事業の公募が3月23日から始まった。

日本政府は昨年12月20日、2020年度予算案を閣議決定し、幼児教育類似施設等に対する新たな支援策とした調査事業の予算に2億円を計上。3月27日の参議院本会議で採決が行われ、賛成多数で可決・成立した。

同支援策では、国が地方自治体に委託する形で対象外施設への調査事業を行い、調査を経て選定された施設に対し一部財政支援が行われる仕組みだ。

しかし問題は、支援の前提となる調査事業の対象が、各自治体において既に何らかの形で支援を実施している施設が主となること、つまり国が統一した基準を設けず、調査有無の判断を自治体に委ねている点である。また調査対象と支援対象は別で、それぞれの自治体によって調査した対象が、来年度からの支援策によって必ずしも支援されるわけではない。

公募開始の翌日となる3月24日、立憲民主党が主催した子ども・子育てPTでは、文科省に対するヒアリングが行われ、会場に集まった類似施設関係者たちから、すべての子どもたちを対象とする支援策にならなくてはいけないということが繰り返し強調された。

また2日後の26日には、「幼児教育類似施設の課題を考える超党派議員の会」(超党派議連)の総会・勉強会があり「幼保無償化制度とそれに伴う一連の追加措置によって、多様な幼児教育の幅がどんどん縮まる」(立憲民主党・阿部知子衆議)などと同支援策に対し、議員らも懸念を示している。

「保育の必要性」のない子ども?

超党派議連の設立総会では、世田谷区の保坂展人区長が講演した。(2月18日)

幼保無償化制度については開始前から様々な問題点が指摘されるなか、それに応じた対策が取られないままスタート。同制度は、高所得者世帯ほどその恩恵を大きくうける不公平を生むどころか、従来保育の現場で課題となっていた待機児童の解消や、保育士不足などは依然改善されることなく、深刻な実情を残したまま現在に至っている。

さらに深刻なのは「すべての子どもの健やかな成長」をうたった根拠法の理念とは、まったくもってかけ離れた支援対象の線引きだ。現時点で、無償化対象となるのは、幼稚園、保育園、認定こども園などの認可施設のほか、「保育の必要性」が認められる認可外保育施設。認可外施設の場合、保育士の配置や施設面積など一定の指導監督基準を設けているものの、同制度では、基準を満たさない場合にも経過措置として5年間は無償化の対象としている。

昨年10月の制度施行後、無償化対象外となった朝鮮幼稚園の関係者らは「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」を中心に、各地で国や地方自治体、国会議員に対する要請や署名運動などを展開。3月24日現在で署名は34万6759筆にのぼるなど、制度の在り方そのものに異を唱える声は、日に日に増している。

一方、同じく無償化対象外となったインターナショナルスクールやブラジル学校をはじめ、園舎を持たず野外保育を行う森のようちえん、子どもの自発性、自主性を重んじるシュタイナー教育・モンテッソーリ教育を行う幼稚園類似施設等の関係者からは「一生懸命お金をかけて各種学校認可を受けた学校が対象外で、無認可の学校が対象となっているのは不公平」(ブラジル学校「HIRO学園」・川瀬充弘理事長)、「園児に対しても幼稚園類似施設に対しても、不公平、不平等な制度であることを認識し、手遅れにならないうちに、早急に国として幼稚園類似施設を無償化の対象にしてほしい」(モンテッソーリ鎌倉こどもの家インターナショナル・加藤允基代表)などといった批判が相次いでいる。

今回、新たに始まった調査事業の趣旨には「保育の必要性のない子どもに多様な集団活動等を提供する無認可の幼児施設等は無償化の対象外となっている」と支援の在り方を検討した経緯が述べられているものの、果たしてどこに「保育の必要性」のない子どもがいるのだろうか。

今後、各地方自治体に対しては、朝鮮幼稚園を調査の対象に含むよう、あらゆる働きかけをしていく必要がある。無償化制度の対象外となり、その救済措置からも除外されることは決してあってはならない。

(韓賢珠)