議連通じた問題打開を

「幼児教育類似施設の課題を考える超党派議員の会」の総会および勉強会が26日、衆議院第2議員会館で行われた。

「幼児教育類似施設の課題を考える超党派議員の会」(以下、議連)総会と勉強会が26日、衆議院第2議員会館で行われた。

同議連は、「教育の機会均等原則に鑑み、幼児教育類似施設を無償化の対象に含めることについて、速やかに諸課題を整理し、必要な施策を講じること」を目的に、2月18日に設立された。

同日行われた設立総会では、その経緯について、自民党・馳浩衆議(会長)が、「子ども・子育て支援制度のなかで、幼児教育類似施設の位置づけをどうしていくのかについて様々な課題がある。社会的な関心である以上、この問題について、プラットフォームを設けたほうがいいということで今回設立に至った」と述べている。

総会では初めに、馳浩会長のあいさつがあったのち、3月23日から公募がはじまった無償化対象外施設への調査事業と関連し、関係府省へヒアリングが行われた。

あいさつする馳浩会長

ヒアリングでは調査事業の詳細について文科省大臣官房審議官が説明。つづいて東京大学の秋田喜代美教授が「幼児教育・保育の質向上に向けて」をテーマに講演を行った。

同氏は、(1)国際的な枠組みで「保育の質」がどのように意味づけされているのか、(2)保育の質が子どもの育ちにいかに影響を及ぼすのか、(3)質向上のために求められることは何かについて、先行研究に即して発言。そのうえで、「分け隔てなくすべての子どもたちや家庭のために保育の質を確保すること、質向上のために支援を講じていく必要性があること」を強調。

その後、質疑応答が行われた。

阿部知子衆議(立憲民主党)は、今回の調査対象が、現時点で「各自治体が何らかの支援を行う施設」に限定されていることに言及し「多様な子どもの育ちにかかわる取り組みをする幼児施設が多い。今回の調査では、森のようちえんなど多様な施設等に視野を広げるべきではないか」とした。

また中川正春衆議(立憲民主党)は、幼保無償化制度について、何を基準に給付を行うのか、そのことを整理すべきだと文科省担当職員へ呼びかけたうえで、議連でこの点を考えていく必要があるとした。

「無償化されない施設に通うこどもが、無償化対象施設に移ることで、新しい試みをする(対象外)施設が廃園に追い込まれる。施設や教育システムに対し行う無償化と、子ども一人ひとりに教育保障の側面で行う無償化と、二通りの考えが整理されないままだ。施設だけで判断すると、国の基準に合致しなければ対象外となってしまう」(中川衆議)

これらの発言と関連し、他の議員からは「現行制度ではこぼれ落ちる施設が出ることが問題の本質だ」「一人も取り残さないすべての子どもが幸せな社会を目指すべきだ」「子どもは自分では施設を選べない。(支援対象は)一定の育つ権利、生きる権利を保障できる施設ではなくてはならない」「公的資金を導入するのだから国民の理解がいる」などといった多様な意見が出た。今後、議連では、外国人学校幼児施設の教育保障の問題をはじめ、さまざまな実践現場の関係者らを呼び、政府の関係府省とともにヒアリングなどを設けていく予定だ。

鋳型にはまらない対象へ応援スキームを/世田谷区長が講演

総会・勉強会に先立ち行われた先月の設立総会。集まった議員たちを前に、世田谷区の保坂展人区長は「『独自の幼児教育団体』を無償化のフレームの中に!」というテーマで講演を行った。

2月18日に行われた設立総会のようす

保坂区長は、現行制度の矛盾を表す具体例として、1987年に野外型幼児教育団体としてスタートした「あおぞら園」(世田谷区給田)や、世田谷区内各所の公園などを利用し外遊びに力をいれる「あそびの会」など、地域の需要があり歴史のある区内類似施設を紹介したうえで、これまで同類似施設らに対し、「子育て活動団体助成補助事業補助金」の名目で区独自に行ってきた支援に言及。一方で、今年度から国の調査事業に伴い、各自治体に対する国の応援予算が導入されるとした昨今の報道をベースに、「区議会では、文科省で(その調査と関連する)公募要領が出ればすぐにキャッチし、それらの団体を扱えるよう予算を組んでいる」と述べた。

区長の報告によれば、世田谷区では、「公私の保育園・幼稚園、認可外保育施設等に在籍しておらず、国都等の助成を受けていない」団体で、「3~5歳児が5人以上在籍し、週2回以上かつ1回あたり2時間以上の活動を1年以上実施している」団体を対象に、一人当たり、月額約5600円の補助を検討しているという。

世田谷区の保坂展人区長は「『独自の幼児教育団体』を無償化のフレームの中に!」というテーマで講演した

保坂区長は、講演の結びで「鋳型にはまらない幼稚園やグループに対し、議員の先生方の力で、応援スキームをつくってほしい。今回のような問題は、議連を通して打開をみるのが最速の道なのではないか。幼児教育の基礎をつくる場所、何十年の蓄積がある場所をつぶさないでほしい。少子化の傾向を反転するような幼児教育支援をお願いしたい」と議員らに向け訴えた。(*世田谷区議会では昨年12月5日、「幼児教育・保育の無償化に関する意見書」を提出している。)

同議連は、呼びかけ人代表に自民党・馳浩衆議(会長)が、そのほかにも立憲民主党・中川正春衆議院議員(元文科大臣)など自民、公明、立民、国民、共産、維新、社民からなる23人の超党派議員らが呼びかけ人となり、26日現在で無所属を含む55人の議員が賛同している。

(韓賢珠)