幼保無償化制度の対象から朝鮮幼稚園を含む各種学校認可の外国人学校が除外されていることと関連し、27日午後に行われた衆議院文部科学委員会で、立憲民主党の初鹿明博衆議が、質疑を行った。これに対し、萩生田光一文科大臣、中山展宏外務大臣政務官が答弁。この日、傍聴席には、「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」のメンバーらも同席した。

27日の衆議院文科委で質疑を行った初鹿明博衆議(参照・衆議院インターネット審議中継公式HPより)

午後3時半から行われた初鹿衆議の質疑では、冒頭、「多様性を認め合う」ことを明言した安倍首相の第200回臨時国会所信表明演説に言及し、各種学校などの幼稚園類似施設を、先述した演説と矛盾する形で、多様性を理由に排除した点について改めて指摘。その上で、今後、幼稚園類似施設に対し、財政支援をする用意があるのかを問うた。

これは、萩生田文科大臣が大臣就任後の定例記者会見(2019年9月11日)にて、自治体が助成をする制度を設けた場合、国が各自治体に対し費用を補助する制度をつくるといった趣旨の公式見解を表明してきたにも関わらず、その具体的な内容が、新年度が間近に迫る今日に至るまで、依然として見えないことにある。

質疑に対し、萩生田文科大臣は「幼児教育類似施設については、各地域に固有のさまざまな歴史的経緯を経て、地域や保護者のニーズに応え重要な役割を果たしているものもあると考える。このような施設について、国と地方が協力した支援のあり方にについて検討を続けている。無償化の枠の外の施設について関係府省と連携し、要件などを含めできるだけ早く年内を目途に支援のあり方を検討している」と回答。

また初鹿衆議が、「自治体が補助をする対象施設の中に、各種学校の外国人学校も含まれるという理解でいいのか」と問うと、「地域のニーズは国が判断できない。そのため首長に判断を委ねている」と答え、「その対象のなかに朝鮮幼稚園も入るのか」「朝鮮幼稚園であることを理由に、排除するということはないのか」と繰り返し質問する初鹿衆議に対し、萩生田文科大臣は「各種学校を含め検討している」と明言を避けた。

一方で、初鹿衆議の質疑では、9月に訪朝した金丸信吾氏が、宋日昊外務省大使との面会時に聞いた宋大使の「前提条件なしでの日朝交渉を公言した安倍首相が、他方で核、ミサイル、拉致が論議されなければならないと発言しており、それ自体が前提条件であり、矛盾している」と指摘した発言を紹介。またその矛盾した内容に、高校無償化や幼保無償化制度からの朝鮮学校除外が含まれているとした宋大使の発言に注目し、「無条件といいながら政府は条件をつけているが、政府としての見解を聞きたい」と質問した。答弁に立った中山外務大臣政務官は、「日朝平壌宣言に基づき拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算し国交正常化を目指す。幼保無償化については所管外のため発言を控える」と従来の日本政府の立場表明に留まるなんとも歯切れの悪い答弁であった。

傍聴した中央教育会の李龍浩副会長は「日本政府は、すべてあやふやにし流そうとしているという印象を受けた。11月2日の全国集会以降、引き続き運動が下火にならないよう、教育会では各地の情報を共有しより活発な運動の展開に寄与していきたいと考えている。各首長たちが適正な判断をするよう、自治体要請により一層力を注いでいかなくてはならない」と話した。

“事前調査でも蚊帳の外”

答弁する萩生田光一文部科学大臣(参照・衆議院インターネット審議中継公式HPより)

この日行われた初鹿衆議の質疑に対し、萩生田文科大臣の答弁中、「現在把握する(対象外)施設は200数十ヵ所」で、それら施設への財政支援については「認可基準より寛容な要件を検討」しているという発言があった。

ここで確認すべきは、(1)今後日本政府が、「把握」したとする約200数十ヵ所の対象外施設のみを念頭に支援策を講じようとしているのか、(2)その場合、朝鮮幼稚園は対象に含まれるのかということだ。

これらについては、この間の萩生田文科大臣による定例記者会見をみると、いくらか考察が可能になる。

まず一点目については、今年9月11日の記者会見中、萩生田文科大臣は、「今、文部科学省の方では、全国にこういう類似施設で補助対象になっていないもので、しかし自治体としては、その園の経営を一定程度認めているものはどれくらいあるのだろうかというヒアリングをですね、春先頃からしていただいて、概ね全国で200数十の施設があがってきたところです。その辺をよく見てですね、できればもう一段階この対象を増やしていくようなことも、ぜひ、検討してみたい」と発言し、自治体によるヒアリングをもとに、200数十ヵ所の施設を念頭においていることを示唆している。

そして二点目として、この間、自治体が何らかの基準で選定した施設に対し「調査票」が送付がされており、朝鮮幼稚園についても、11月現在で、3つの自治体から「調査票」が送られてきている。文科大臣が言及した自治体による対象外施設への「ヒアリング」が、仮に「調査票」のみをもって行われ、それを基準に日本政府が200数十ヵ所という「把握」をしたとすれば、この時点ですでに、3つの自治体以外に所在する朝鮮幼稚園は、調査からもこぼれ落ちたことになる。

一方で、立憲民主党所属の早稲田夕季議員が4月2日付で提出した「幼稚園類似施設に関する質問主意書」(第198回国会で質問)によると、川崎市には「国の認可を受けていないものの、市が独自の認定基準で認定」した幼稚園類似施設は「七園あり、鎌倉市では十園、横浜市は四園」で、神奈川県下3つの自治体だけで21の施設があるという。これらを踏まえたとき、日本政府が「把握」したとする200数十ヵ所という数字は、あまりにも少なく、今後、対象選定の過程も問うべきであろう。

また、萩生田文科大臣が9月27日付記者会見で「各種学校というカテゴリーの中では、なかなか直ちに法律の枠の中に入ってくるのは難しいと思いますけれども、私が取り組んでいますのは認可外等であって、それぞれ歴史的な経緯があったりして存続をしている園の中でですね、やっぱり国がその園の良さというのはなかなか分かりません」と発言していることから、今後日本政府が、自治体と連携し検討するとした財政支援の枠に、各種学校認可のすべての朝鮮幼稚園が含まれない可能性は排除できない。

他方で、2013年に省令を改悪し、高校無償化制度の対象から朝鮮高校のみを排除した下村博文・文科大臣の時代に、この幼保無償化制度の段階的実施(2014年)が決まるなど、安倍政権下で現在まで政策運営がされていることは、決して看過すべきでない。

萩生田文科大臣の「地域のニーズは国が判断できず、首長に判断を委ねている」とした答弁。朝鮮幼稚園を含む一部の対象外施設が「蚊帳の外」であることを想定したとき、制度の見直しを求めるのはもちろんのこと、各地域における自治体への不断な働きかけが必要だ。

(韓賢珠)