会場は300人を超える参加者たちでいっぱいとなった

「朝鮮幼稚園にも『幼保無償化』適用を! 11.11京都緊急集会」(主催=「幼保無償化適用を求める京都朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、「京都連絡会」、共催=「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋(こっぽんおり)」)が11日、京都市内で行われた。会場には300人を超える同胞、日本市民たちがつめかけた。

集会では、はじめに、幼保無償化制度の概要や、各種学校除外の理由などについて、玄政和弁護士が解説した。玄弁護士は、現在日本政府が朝鮮幼稚園除外の理由にあげる①多種多様な教育を行っていること、②児童福祉法上、認可外保育施設に該当しないという2点について、「(各種学校が)多種多様な教育を行っていることと、幼保無償化制度の趣旨はそもそも関係ない。つまり多種多様な教育を行うことが、日本政府が支援を行わなくてもよいという理由にはならない」と指摘。第2の理由についても「認可外保育施設に該当しないとする根拠が不明である」と一蹴した。

玄政和弁護士

玄弁護士は、今後権利獲得にあたり見据えるべき射程について、各種学校に対する制度の全面適用を求める一方で、地方自治体独自の保障を迫っていく必要性についても強調。そのうえで、2015年9月の国連総会で、国内外のさまざまな課題解決に向けて採択された国際目標SDGs(Sustainable Development Goals)を、積極的に推進する京都府・市の例を紹介しながら「京都の場合、SDGs推進に伴い推し進めるのは、多様性と包括性のある社会の実現だ。そのような観点からも、今後自治体へ促していこう」と呼びかけた。

「京都連絡会」の鄭英姫代表

つづいて「京都連絡会」から鄭英姫代表が報告した。9月19日の発足以降、「京都連絡会」では京都市(10月16日)、京都府(10月25日)への要請など、当事者である保護者たちを中心に積極的に声をあげてきた。

鄭代表は、京都市・府への要請活動について詳細に報告したうえで、要請の数日後に府の職員が幼稚園を視察したことに言及。「子どもたちの権利や尊厳が踏みにじられている現状を黙ってみてはいられない。私たちの夢であり希望であり未来である子どもたちのために、京都同胞が一致団結し、日本の方々とも連帯し高校無償化・幼保無償化が朝鮮学校にも適用されるよう声をあげていこう」と訴えた。

横断幕を持ち登壇した「京都連絡会」の関係者たち

次に、「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋(こっぽんおり)」のさとう大事務局長が発言した。

さとう事務局長は、発言冒頭「私は二重の怒りを感じている。一つ目の怒りは、いま再び差別を跳ね返すために集まらなければならないこと。そしてもう一つの怒りは、『声よ集まれ、歌となれ』のフレーズに『いますぐその足をどけてくれ』という歌詞があったが、決してレイシストの足だけではない、在日朝鮮人の尊厳を踏みにじるその足が、日本社会が生み出した、日本の政治そのものであるということだ」と声を震わせた。

こっぽんおりのさとう大事務局長

一方で、県下朝鮮学校の保健室でボランティア活動をする日本人支援者や、多文化保育を進める保育園園長、京都市保育園保護者会連絡協議会の関係者など、この日、会場を訪れた賛同者らを順に紹介した後、こっぽんおりの活動報告を行った。

さとう事務局長は、公的ヘイトが横行する社会状況で、自治体に対し働きかけていく重要性を説きながら「勝負は来年4月から。なぜなら今年度の幼保無償化の財源は国があてているが、来年度は国とともに市や区といった自治体が出すことになる。単に幼保無償化の補填だけでなく、民族教育そのものを認めるよう自治体への訴えを進めていく。当事者たちを正面に立たせるのではなく、ともに正面に立ち訴えていきたい」と語った。

続いて、連帯のあいさつを、安井勉京都市議(立憲民主党)、I女性会議・京都の白井美喜子議長が行ったのち、日朝協会京都市連合会、朝鮮の自主的平和統一を支持する京都委員会より寄せられたメッセージの紹介があった。

民族教育の核心は幼児教育に

集会では、3人のスピーチがあった。

朴賢憲さんのスピーチに会場からは大きな拍手があがった

「私は小・中・高・大を日本学校で学び、自分がなにものなのかを気づかないまま生きてきた。同胞コミュニティに出会ったおかげで民族性を獲得していった」―そう語ったのは京都第2初級保護者の朴賢憲さん。朴さんは「今年4月、娘が朝鮮幼稚園に入園し、朝鮮学校の保護者となり気づいたことがある。民族教育の核心は幼児教育にあるということ。私があれだけ苦労して民族性を獲得したのに、娘は自分が朝鮮人であることを、朝鮮幼稚園で自然と身に着けている。朝鮮学校にはそれほどの価値がある」と高らかに訴えた。

「これはお金の問題ではなく、先代たちが守ってきた尊厳の問題。わが子を含め、いまの学生たちが大きくなったときに、『無償化闘争のときアッパは何をしてたの』と聞かれても恥じないようにしたい。人に任せるのではなく自分たちで闘って勝ち取りましょう」。

朴さんの力強く核心をつくメッセージに、会場からは「チョッター」と大きな歓声と拍手があがった。

黄恵淑教員

京都第2初級付属幼稚班の黄恵淑教員は「ただ朝鮮人として民族教育を受けるために朝鮮幼稚園に通う子どもたちが、差別を受けることはあってはならない。保育者として朝鮮幼稚園の教諭として、子どもたちが何不自由なく学べるよう闘っていきたい」と力を込めた。

同志社大教授でこっぽんおり共同代表の板垣竜太さんは「幼保無償化は、朝鮮学校だけを狙い撃ちして排除した高校無償化制度の延長にある制度」だと問題提起した。そのうえで、この間の日本政府の動きや、政権に追随するメディア、それを支持する日本国民という社会構図について、その根底には「清算されないままの植民地主義」があることを指摘。

板垣竜太さん

板垣さんは「安倍政権は、徴用工問題について国際法違反だと韓国政府に対し訴えている。しかし、その中身をみると日韓条約の解釈をめぐる違いしか出てこない。それをもって国際法違反だというなら、日本政府は国際機関から高校無償化からの朝鮮学校排除について、度重なる勧告をうけ是正措置を講じろといわれても無視している。それこそ国際法違反ではないか」と訴え、「植民地主義の現代的形態のひとつが幼保無償化。植民地主義との闘いという射程でこの問題に取り組んでいきたい」と話した。

集会では、「京都連絡会」のアピール文を、京都初級保護者の金哲奎さんが朗読した。

集会アピール文では、3つのアクションが提起された

アピール文では、今日の集会を契機に一日も早く朝鮮幼稚園にも差別なく「幼保無償化」制度が適用されるよう、(1)「外国人幼稚園に『幼保無償化』適用を求めるメッセージ募集」し運動を幅広く展開すること、(2)国や地方自治体に「幼保無償化」適用を求める声をより大きくあげていくこと、(3)毎週行われる火曜アクションに参加するなど広く社会に訴えていくこと、以上3つのアクションが提起された。

豊福誠二弁護士

また、こっぽんおりからのアピールとして、こっぽんおり共同代表の豊福誠二弁護士が発言。豊福弁護士は「今回の幼保無償化除外は明白な人種差別、民族差別にあたる。人種差別撤廃条約が固く禁じているものだ」としたうえで、在特会による京都朝鮮学校の襲撃事件判決が出た当時、世界各地のメディアが報道するなど国際的な関心が集中したことに触れた。豊福弁護士は「日本の人権状況をみる国際社会の目はすごく厳しいものだ。日本でこのような事件を起こしているのが為政者、国であることを世界にアピールしていくべきだ」と話した。

閉会に先立ち、アピール文で提起された具体的行動について説明があった。

この日、無償化適用のための具体的行動として、京都独自のメッセージ募集運動が提起された

「京都連絡会」では、この日の集会をスタートに、内閣総理大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣宛の抗議メッセージを独自に募集していく。期限は12月末日で、目標数は3000枚。集めたメッセージは、来年1月に「京都連絡会」の代表らが、関係省庁へ出向き直接担当者へ提出する予定だ。

「京都連絡会」では「#「幼保無償化」適用」「#民族差別反対」などのハッシュタグをつけSNSで認証写真をアップするなど、広く拡散を呼びかけている。

集会の最後に「声よ集まれ、歌となれ」を参加者全員で合唱した

集会は、最後に参加者全員で「声よ集まれ、歌となれ」を合唱し閉会した。

11月2日に東京で行われた全国集会以降、地方で行われる緊急集会は京都が初で、16日には、九州中高体育館で「幼保無償化除外に抗議する緊急集会」が開かれる。各地では、保護者連絡会を中心に、現在無償化の対象外とされている外国人学校幼稚部や類似施設に対し、来年4月から各自治体が独自の対策を講じるよう迫っていく。

(韓賢珠)