27日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で、「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、連絡会)による記者会見が行われた。
会見したのは、連絡会の宋恵淑代表、康仙華弁護士、鶴見朝鮮幼稚園の徐怜愛教員の3名。
10月1日から実施される幼保無償化制度から、朝鮮学校を含めた各種学校認可の88校が除外されることについて、代表らは「理不尽な差別だ」と訴えた。
宋代表は冒頭、国の方針により、朝鮮学校やインターナショナルスクールなど各種学校が行う幼児教育施設が、幼保無償化の適用対象外となった経緯について言及したうえで、同制度が「『すべての子どもたちのために』とうたいながら、ほんの一握りの子どもたちが除外されてしまった」と指摘。
また現在、日本政府が各種学校を対象外とする理由に、「多種多様」な教育が行われていることをあげている点について触れながら、「朝鮮幼稚部をはじめとする外国人学校は、多種多様なバックグラウンドをもつマイノリティの子どもたちにとって、自己のルーツや出身国の言語や文化にふれながら自己の出自を肯定的に受け止め、アイデンティティを確立していくとても大切な学びの場だ。
まさに『幼保無償化』の理念のひとつである『健やかに成長する』ために必要な施設。
それなのになぜ、適用対象として検討すらされず、除外されるのか」と批難した。
康弁護士は、対象外理由である①多種多様な教育を行っており、法律により幼児教育の質が制度的に担保されているとは言えない、②児童福祉法上、認可外保育施設に該当しない、以上の2点について、矛盾していると指摘。
康弁護士は、日本政府が示した①の理由に対し、「各種学校の幼稚園は各種学校の設置基準を満たしている。
朝鮮学校の幼稚園は『幼稚園教育要領』に準じた教育を行っている」とし、②の理由については、「各種学校が、認可外保育施設に該当しないという法令上の根拠が一切ない。
むしろ、児童福祉法、厚労省通達によれば、乳幼児が保育されている実態がある施設は認可外保育施設に該当。
理由として成り立たない」と強調した。
そのうえで康弁護士は、各種学校に対する今回の日本政府の対応について、「高校無償化と連動するもので到底許されるものではない」としながら、この日集まった国内・海外メディアに向け「深刻で不当な人権侵害であることを国際社会にも発信してほしい」と訴えた。
徐教員は、日々子どもたちと接する保育士という立場から「何よりも、私たち教員は、子どもたちがこの先、幼児期を経て社会人として成長するにあたって、いわば根っこを育てていると考えている。
日々の保育を計画するうえでも、子どもたちのその後の将来も見据え、幼児期の今、どのような経験ができるのだろうか、常に考えて研究や実践を重ねている」と発言。
徐教員は、法的根拠のない政府方針により、各種学校が排除されたことに強い憤りを示したうえで、「この日本社会において生まれながら差別に苛まれる子どもたちを作り出してしまうという危機感を強く感じている。
これ自体が国際条約である『児童の権利に関する条約』における基本精神『児童の最善の利益』に違反する行為ではないか」と話した。
また、この日会見場には、インターナショナルスクールの関係者や、ブラジル人学校・保育施設の支援者らも同席した。
発言した滋賀県立大の河かおる准教授(外国人学校にも幼保無償化を適用することを求めるキャンペーン・世話人)は、「滋賀をはじめ、ブラジル人学校には認可外保育施設としてのみ運営している保育所もたくさんある。
しかし今回の件で逆に、整備や条件が整っている各種学校認可のブラジル人学校が除外され、認可外施設が対象となる矛盾の状況が生まれる可能性がある」と話すなど、同制度の施行により、朝鮮学校のみならず、日本にある外国人学校に通う幼児らの幼児・保育環境が奪われることへ懸念を示した。
(韓賢珠)