各地の人権協会・協議体における取り組みが共有された

9日に行われた在日本朝鮮人人権協会の全国オンライン交流会では、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、九州地域における取り組みと成果が報告された。

東京人権協会

東京人権協会の金舜植会長(弁護士)は、今年7月、広島無償化裁判において最高裁が、原告の主張を退けた一審、二審判決を支持し、上告を棄却したことで東京、大阪、愛知、広島、九州の全5カ所で行われてきた同種訴訟すべての原告敗訴が確定したことについて言及。「弁護団の結成から提訴、判決に至る過程で築いたネットワークを今後どう生かしていくのかが重要だ」(金会長)。

東京人権協会では今後、日本の市民らに朝鮮学校と民族教育の正当性に対する理解を広めていくため、都内各地の朝鮮学校で支援団体を発足する取り組みに関わって行こうと考えている。そのためには、若手の同胞弁護士が多いという東京人権協会の利点をいかして、日本の弁護士と協力してそれぞれの学校に相談役の弁護士を配置するなど、支援団体の発足に尽力したい」(金会長)。

また同協会所属の弁護士らの尽力により、今年3月、東京地裁が朝鮮大学校正門から半径500メートル以内での排外主義者による街宣行為を禁止する仮処分決定を発令したことが成果としてあげられた。

ほかにも、人権協会の性差別撤廃部会とも協力し、関東圏の朝鮮学校を中心に法教育や性の多様性等に関する人権教育を継続的に行ったことが報告された。

大阪人権協会

今年9月に結成17年を迎えた大阪人権協会では、会員たちのスキルアップを目的に2ヵ月に1回、定例学習会を実施している。また年に4回、総聯大阪府本部と各支部の会館で無料法律相談を開催。地域の同胞らに寄り添う活動を行っているほか、府内の朝鮮学校の児童らを対象にした法教育にも取り組んでいる。

また大阪人権協会では、高校無償化問題と関連して「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」(「無償化連絡会・大阪」)が行う活動にも積極的に参与している。「無償化連絡会・大阪」が主催するオンライン学習会に、同協会所属の弁護士らも参加。毎週、大阪府庁前で行われてきた「火曜日行動」を今後も引き続き行っていくとともに、大阪無償化裁判の記録集の出版を予定している。

各地の人権協会・協議体における取り組みが共有された

兵庫人権協会

2019年に若手の専門家を中心に結成された兵庫人権協会では、県下の朝鮮学校の児童らを対象に、法教育を中心とした特別授業を実施。またコロナ禍で活動が制限されるなか、朝鮮学校の教員を対象にオンライン人権講演会も行った。

ほかにも、私立大学などの推薦入試において、朝高卒業生の個別審査が拒否されるケースが散見しているとし、留学同兵庫とともに、大阪、兵庫、京都の私立大学などを対象に推薦入試における朝高卒業生の受験資格に関するアンケート調査を実施した。

九州人権協会

九州人権協会では、県下の朝鮮学校への図書の寄贈、キャリア座談会の実施など、朝鮮学校支援に取り組んでいる。2019年からは同胞を対象にした無料法律相談会を3回実施した。また19年3月に九州中高、北九州初級の最寄り駅であるJR折尾駅で行われた差別的な街宣活動に対して、人権協会所属の弁護士らが中心となって選挙管理委員会と警察への申し入れ、法務局への人権救済の申し立てを行った。

九州無償化裁判を通じて、人権協会に所属する同胞弁護士らと、日本の弁護士らの連携が強化され、継続して朝鮮学校を支援する枠組みが作られたことが大きな成果だと報告された。

京都協議体

京都協議体は、会員たちの学習及び交流と、京都中高での法教育を二大目標に掲げて活動を推し進めてきた。

2019年に、朝鮮高校の無償化制度からの除外を歴史的、法的側面からみるシンポジウムを開催。また歴史、法律、情勢など、広範なテーマを扱う会員向けの学習会「きょうゼミ」を行っている。また京都中高の生徒らを対象にした法教育は20年、21年にそれぞれ実施した。

東海地方

東海地方でも愛知無償化裁判を通じて、同胞弁護士らと、日本の弁護士らの連携が強化された。また市民団体「朝鮮高校無償化ネット愛知」をはじめ、朝鮮学校と民族教育の正当性を知り、継続的に支援する動きがうまれた。今後、「朝鮮高校無償化ネット愛知」は、県下の幼稚園から高校に至るまでの朝鮮学校を継続的に支援する会として「民族教育の未来をともにつくるネットワーク愛知・ととりの会」に名を変え、愛知人権協議体の会員らもその活動に参画している。

ほかにも幼保無償化問題、学生支援緊急給付金問題と関連し、同人権協議体に所属する若手弁護士らが、差別の是正を求める愛知県弁護士会の声明の発表に貢献したことが成果として報告された。

(全基一)