「信頼に報いる」「魅力ある幼稚班に」

2019年10月にスタートした幼保無償化制度から、朝鮮幼稚園など外国人学校幼稚園が対象外となり約1年と4ヵ月。これまで制度適用を求め、各地の同胞や日本の支援者らが中心となり行ってきた運動は、昨年実施された対象外施設への支援策を検討する「調査事業」の対象に朝鮮幼稚園が所在する10以上の自治体が選定されるなど、新たな局面を手繰り寄せた。そのような状況下、朝鮮大学校の現役学生のみならず、各地の朝鮮幼稚園に勤務する教員たちもまた、子どもたちの明るい未来のために貢献したいという思いから、保育士資格取得のために懸命に努力を重ねてきた。

川崎初級付属幼稚班の孫美香さん、名古屋初級付属幼稚班の金莉沙さん、北大阪初中付属幼稚班の梁有那さん、大阪福島初級付属幼稚班の曺由華さんが2020年度保育士試験に合格し、保育士資格を取得した。

現在、川崎初級付属幼稚班の主任を務める孫美香さんは、朝大外国語学部卒業後、朝鮮青年社を経て07年から同校で幼稚班教員として勤務。保育科の卒業ではないが、10年以上にわたる実務経験の中で培った知識を生かし、昨年1年間で筆記試験と実技試験をクリアした。

川崎初級では孫さんの資格取得により、幼稚班の全専任教員が有資格者に。孫さんは「保育士資格の取得は、朝鮮幼稚班や教員を信頼して子どもを送ってくれる保護者らに報いることにつながり、園児数増加の展望も開ける。その点で大きな意義を感じている」と力を込める。

各地の朝鮮幼稚園教員が2020年度保育士試験に合格し、保育士資格を取得した(写真は川崎幼稚班の孫美香さん)

「今後、資格をどう生かしていくのかがより重要だ。勉強の過程で学んだことを現場でしっかりと生かしていきたい。これに満足することなくこれからも学び続け、保育の質をいっそう高めていきたい」(孫さん)

金莉沙さん、梁有那さん、曺由華さんは朝大教育学部保育科卒業生。それぞれ学校や同僚のサポートを受けながら忙しい保育の合間を縫って努力を重ね、今回の合格に至った。

金さんの受験に際し、週1回の朝の通学バスの付き添いの分担を他の先生たちが代わりに受け持ってくれるなどし、自身の勉強時間を確保するために尽力してくれたという。「学校全体で支えてくれたおかげで、絶対に合格しようというモチベーションを高く保つことができた。本当に感謝している」。

資格を取得して、保護者や同僚たちが喜んでくれたことがなによりうれしいと述べた金さんは「今回の合格でより自信がついた。これを機に民族教育の場でしかできない保育を模索し、子どもたちを立派に育てていきたい」と力を込めた。

一方、梁さんは今年度前期での合格を目標に掲げ、計画的に勉強を実施。新型コロナの影響で前期試験が中止となったが、動画共有サイト上での講義など利用して知識を積み重ね、後期試験で合格した。

梁さんは「資格を取得した分、これから責任も増すし、担う役割も大きくなると思う」と気を引き締めながら「尊敬する先輩教員たちのように自分も子どもたちをしっかり育てて、魅力あふれるウリ幼稚班を築いていけるよう頑張りたい」と決意を述べた。

(根、鳳)