幼保無償化制度から朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校の幼児教育・保育施設が対象外となっていることと関連し、長野県弁護士会が会長声明を発表した。

同種声明および意見書は、昨年12月20日、日弁連による会長声明が発表されて以降、埼玉(2月12日)、大阪(2月13日)、京都(2月19日)、東京(3月17日・第二東京弁護士会)、福岡(7月2日)、茨城(8月7日)、広島(10月14日)、神奈川(10月22日)の各地で発表されており、今回で10例目となった。

20日付で公表された声明は、昨年10月に始まった幼児教育・保育の無償化制度から各種学校認可を受けた朝鮮幼稚園やインターナショナルスクール等が対象外とされたことについて「各種学校である外国人学校幼保施設は、学校教育法第134条に基づき各都道府県知事の監督に服しながら幼児教育を行っている」とその正当性に触れたうえで、国が各種学校を対象外の理由にあげた「個別の教育に関する基準がなく多種多様」であることは同じく「多種多様な教育を行っている認可外保育施設が無償化制度の対象とされている以上、理由にならない」と非難した。

声明は、「すべての子どもが健やかに成長するように支援する」とした幼保無償化制度の根拠法である改正子ども・子育て支援法の基本理念に照らし、「外国人学校幼保施設に通っている子どもであっても制度の対象とするのが同法の趣旨に適うもの」だと指摘。そのうえで、対象外とすることは憲法14条や自由権規約など国際諸条約に違反する「合理的理由のない差別」だと断罪した。

また声明は、現在、国と地方自治体が無償化の対象外施設に対し、支援の在り方を検討しようと行っている調査事業の実施対象が「地方自治体が地域にとって不可欠であると判断して既に支援事業を行っている」施設であることや「調査対象施設として申請されるか否かについても地方自治体に委ねられている」ことを指摘したうえで「外国籍のこどもやそれにかかわる外国人学校幼保施設が差別なく扱われることは、全国一律の判断が求められる」と強調した。

声明では、▼国に対し、無償化制度を外国人学校幼保施設にも適用するよう、速やかに法改正をすること、▼地方自治体に対し、国による法改正がなされるまでの間、差別を実質的に解消するために、外国人学校幼保施設に対し広く積極的に財政支援を実施すること―を求めた。

(韓賢珠)

以下、声明全文。

外国人学校の幼児教育・保育施設を幼保無償化制度の対象とすることを求める会長声明

1 子ども・子育て支援法改正法が2019年10月1日から施行され、幼児教育・保育の無償化制度(以下、「本件無償化制度」という。)が始まっている。

本件無償化制度は、幼稚園、保育園、認定子ども園に加えて認可外保育施設等も対象として進められている。一方、インターナショナルスクール、ブラジル人学校や朝鮮学校等学校教育法第134条に基づき各種学校としての認可を受けたいわゆる外国人学校の幼児教育・保育施設(以下、「外国人学校幼保施設」という。)は、「幼児教育を含む個別の教育に関する基準がなく、多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象とはならない」として、本件無償化制度の対象から除外された(「幼児教育・高等教育無償化の制度の具現化に向けた方針」2018年12月28日関係閣僚合意。)

2 しかし、各種学校である外国人学校幼保施設は、学校教育法第134条に基づき各都道府県知事の監督に服しながら幼児教育を行っている。また、多種多様な教育を行っている認可外保育施設が本件無償化制度の対象とされている以上、多種多様な教育を行っていることは、各種学校を本件無償化制度の対象外とする理由にならないはずである。

そもそも、「全ての子どもが健やかに成長するように支援する」という子ども・子育て支援法の基本理念に照らせば、外国人学校幼保施設に通っている子どもであっても無償化の対象とするのが司法の趣旨に適うものであり、外国人学校が各種学校であって認可外保育施設に該当しないことを理由に、外国人学校幼保施設に通っている子どもを本件無償化制度の対象外とすることは、合理的理由のない差別であって、憲法第14条、自由権規約第2条1項、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約第2条1項に反し、許されない。したがって、国は、本件無償化制度を広く外国人学校幼保施設にも適用するよう、速やかに法改正をするべきである。

3 国は現在、国と地方自治体が協力して支援を行う制度を検討するための事業として、地域における小学校就学前の子どもを対象とした多様な集団活動等への支援の在り方に関する調査事業(以下、「本件調査事業」という。)を行っている。

しかしながら、本件調査事業は、地方自治体が地域にとって不可欠であると判断して既に支援事業を行っている施設が対象であり、また、調査対象施設として申請されるか否かについても地方自治体に委ねられている。

外国籍の子どもやそれにかかわる外国人学校幼保施設が差別なく扱われることは、全国一律の判断が求められるところであるが、本件調査事業のやり方では地域的格差を生じかねず、今後検討される国による支援策も、地方自治体が支援している施設が前提になることが推測され、その場合、外国人学校幼保施設が一律に無償化の恩恵を受けられることにはならないのではないかとの懸念を抱かざるをえない。

4 よって、当会は、国に対し、本件無償化制度を外国人学校幼保施設にも適用するよう、速やかに法改正をすることを求める。

なお、地方自治体に対しては、この法改正がなされるまでの間、上記差別を実質的に解消するために、外国人学校幼保施設に対し広く積極的に財政支援を実施することを求める。

2020年11月20日

長野県弁護士会

会長 中嶌知文