先生と遊びの時間を楽しむ園児らのようす(筆者提供)

幼保無償化制度から朝鮮幼稚園など各種学校の認可を受けた外国人学校幼稚園が名指しで除外されて一年。「要請に集会、パレードに署名運動、たくさんの活動があったけど、幼保無償化問題ってどうなっているの? 」「色々やったけど、除外されたままなんだよね? 」という率直な疑問を抱いている人も少なくないだろう。

実はいま、幼保無償化問題は新たな局面を迎えている。この間、繰り広げられてきた、日本各地の朝鮮幼稚園保護者たちによる関連府省や国会議員、各自治体などへの度重なる要請活動、各地の朝鮮幼稚園での公開保育、高校無償化の適用を求めて闘い続ける朝鮮高校生たちをはじめとする幅広い世代による街頭宣伝や絵本作成などの多彩な運動、そして、日本の皆さんとともに昨年12月からスタートさせ、コロナ禍にも関わらず半年で46万筆を集めた外国人幼稚園への幼保無償化適用を求める署名活動…

こうした活動によって、日本社会における「外国人学校幼稚園にも差別なき幼保無償化の適用を」の声は日増しに大きくなり、日本政府が来年度から実施するとしている幼保無償化の対象外となった幼児教育類似施設に対する「新たな支援策」に、朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校の認可を得た外国人学校幼稚園も含まれる可能性が出てきたのだ。

巻き返しの契機

この間、朝鮮幼稚園は、日本政府に対し、幼保無償化制度の基本理念に立ち返り、幼保無償化制度そのものに外国人学校幼稚園を含めるよう求めながらも、それには法改正が必要というハードルがあることを鑑み、それを実現させるまでの間、日本政府が検討している幼保無償化の対象外施設に対する「新たな支援策」が外国人学校幼稚園にも講じられるよう、関連府省や国会議員などへ要請を重ねてきた。

それと並行して、この「新たな支援策」を形作るために今年度文科省が実施する自治体委託公募型の「調査事業」に、朝鮮幼稚園の園児が居住する自治体のうちどこかひとつでも応募するよう、朝鮮幼稚園の保護者らが中心となり、自治体と地方議会議員に対しても働きかけを行ってきた。こうした活動を通して、朝鮮幼稚園を「調査事業」の対象としたいくつもの自治体が調査委託先として選定されたのだ。

これをうけ文科省は、「調査事業」とその先にある来年度からの「新たな支援策」を講じる対象施設のタイプ(類型)として、以前からHPなどで掲示していた▼団地の有志などにより地域の保育のニーズに応じて行われている幼児施設、▼地域の神社・寺・教会などで集団的活動を行う施設、▼自然の中で幼児教育を行う取り組みのほかに、▼「外国人などを主たる対象とするもの」を加えるにいたったのだ。

署名、さらに一筆が必要

すなわち、名指しで幼保無償化の対象外施設とされた状況から、当事者たちによる懸命な活動そして朝鮮学校・朝鮮幼稚園の子どもたちに平等な権利を求める46万もの賛同署名一筆一筆に込められた思いによって、どうにか来年度からの「新たな支援策」の対象として検討されるまで、巻き返しをはかることができたのだ。

しかし、ここで気を抜いてはならない。最後までどう転ぶかわからないのが朝鮮学校を取り巻く問題である。現在実施されている「調査事業」が来年度からの朝鮮幼稚園への本格的な「支援策」に確実につながるよう、また、「支援策」が今年度の「調査事業」の対象となった一部の朝鮮幼稚園だけでなく、すべての朝鮮幼稚園に講じられるよう、いま一度日本政府に対し大きく声をあげなければならない。

まだ「巻き返した」だけで、高校無償化問題を含めてこれから日本政府に「倍返し」していくためにも、ここからのもうひと踏ん張りが重要で、必要なのだ。

すでに幼保無償化本体への外国人学校幼稚園の適用を求める署名に賛同された方も、あともう一筆、来年度からの「新たな支援策」にすべての外国人学校幼稚園を対象とすることを求める署名への賛同をお願いしたい。朝鮮学校・朝鮮幼稚園の子どもたちのかけがえのない学びの場を守るために。

(宋恵淑/幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会)

100万人署名運動

現在、全機関・同胞的な枠組みで展開されている「100万人署名運動」は、①昨年12月からスタートした朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校認可の外国人学校幼稚園に幼児教育・保育の無償化適用を求める紙署名と、②①と同様の趣旨のインターネット署名、そして③今年9月末からスタートした「新たな支援策」の対象に朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校幼稚園を対象にするよう求めるインターネット署名の3つがある。ここに、より広範な賛同を募るべく、 ④③と同様の趣旨の紙署名を今月から新たに追加し、幼保無償化適用に向けた署名運動に拍車をかけていく予定だ。

関連サイト

朝鮮幼稚園など外国人学校幼稚園が無償化制度から除外された経緯や、署名への参加方法、その他資料などは以下のサイトから確認できる。

幼保無償化連絡会特設サイト「すべての子どもたちに学びの保障を!」