5日の要請は、連絡会の宋恵淑代表をはじめ朝鮮幼稚園に子どもを送る保護者、学校関係者、日本人支援者など、平日の昼過ぎにも関わらず大勢の人であふれかえった。

10月から施行される幼保無償化の対象から朝鮮幼稚園が除かれようとしている。

これと関連し、「すべての幼児に『幼児教育・保育の無償化』適用を求める要請の集い」(主催=「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、連絡会))が5日、衆議院第二議員会館で行われ、厚生労働省、文部科学省、内閣府の担当者に要請した。

会場には、連絡会の宋恵淑代表をはじめ朝鮮幼稚園に子どもを送る保護者、学校関係者、日本人支援者など、平日の昼過ぎにも関わらず大勢の人であふれかえった。

最初に、宋恵淑代表が要請文を読みあげた。

宋代表は「なぜ各種学校だけが名指しで対象から外されるのか。

朝鮮幼稚園はしっかりとした幼児教育と保育の実態を備えている」としながら (1)各種学校の幼児教育・保育施設を無償化の対象として認めること、(2)上記施設を利用するすべての園児たちに、幼稚園並みの月2.57万円までの無償化と、預かり保育が必要な園児に対し、幼稚園預かり保育と同等の月1.13万円を加算する無償化を適用すること、以上の2点を要請し、早急に対応策を講じるよう求めた。

連絡会の代表ら3人は、厚生労働省、文部科学省、内閣府の担当者へそれぞれ要請書を手渡した。

要請書を手渡す保護者代表ら

つづいて、保護者を代表し2人が発言した

都内朝鮮幼稚園に子どもを送る同胞女性(40代)は、「夫婦が地方出身で地元を離れていたため夫婦だけで子育てをしてきた。保育園にも入れなかった。2歳になり娘ははじめて朝鮮幼稚園に入ったが、先生たちは親と同じぐらいの愛情と信念を持って子どもを育ててくれている。日本の幼稚園となんら変わりない子どもの成長に合わせた保育内容、子どものためを思った教育をしている」としながら「無償化の対象から仲間外れにされるのはとっても悲しいし我慢できない。すべての子どもたちといいながら、そのなかに自分の子どもは入らない。あなたの子どもが仲間外れだと言われたら、どんな気持ちになりますか。どうか、うちの子も仲間に入れてもらえるよう検討をお願いしたい」と訴えた

現在、高級部から幼稚園に通う三歳児まで、朝鮮学校に6人の子を通わす神奈川県在住の同胞男性(40代)は、「解釈や制度の問題ではなく、シンプルに差別ではないか。3~5歳の子どもたちですら、差別の対象に扱う始末だ。これは明らかに矛盾であり道理にかなっていない。社会の一員である私たちをしっかりと見てほしい」と話した。そのうえで同胞男性は「黙ることは、間違いを認めることになるので、たとえ何年経とうとも、支援してくれる日本の方々とともに間違った制度を正していきたい」と現行法の見直しを強く求めた。

要請に参加した保護者ら

またこの日の要請では、大阪の朝鮮幼稚園保護者からのメッセージが代読され、そのほかにも愛知、京都の保護者から同様のメッセージが届いた。

要請には、初鹿明博、池田真紀の両衆議院議員、石川大我参議院議員(以上、立憲民主党)、高良鉄美参議院議員、はたの君枝衆議院議員(日本共産党)らが同席し、担当者らへ質問を行った。

参加した議員らは「なぜ外国人学校だけが外されるのか」「保育については認可外の保育施設が基準に該当しないところも含めて対象にするにも関わらず、学校教育法にのっとって設置された各種学校はなぜ対象外なのか。この矛盾に関する説明がない」「各種学校であっても認可外保育施設として届出を出すことができれば、保育の必要性がある子どもは無償化の対象になると考えられるわけだが、それも認めていない。それはなぜか」「多文化共生社会に向けた政府方針を示した直近の政府の方向性と、外国人学校を外すことと矛盾があると感じないのか」など各省の担当者らを厳しく追及。

これらの質問に対し、文科省の担当者は「法律上、幼児教育の質が担保された施設に限り無償化される。各種学校については、幼児教育に特化した基準がない。多種多様な教育が行われている」とし、厚生省の担当者は、「認可外保育施設が対象になったのは、認可保育所に入りたい人の代替措置だ」と答えるなど、「法律上除外」という形式のみ並べ、実際に、学校教育法にのっとり教育機関として質を担保されている各種学校の教育が、なぜ認められないのか、この矛盾に関する十分な説明はなされなかった。

要請には国家議員らも同席した

これを受け、初鹿議員は、「施設に対する給付ではないのに、施設によって切り分ける。制度として矛盾でないのか。施設の形態によって対象にならない子どもがいるのは好ましくない。しかもそれが明らかに外国人の子どもだけを区別をするのは、一般的にみれば区別でなく差別ではないか」と指摘した。

それに対し、文科省担当者は「幼児教育に関する具体的な基準がない。法令上定義がない。(基準を)満たしているかいないかは客観的に図れない」と答え、会場から非難の声があがった。また現在政府が検討中の、幼稚園類似幼稚園についての何らかの支援策について、各種学校はどうなるのかという質問については「それも含めて検討中だ」と答えた。

一方で、会場には、朝鮮学校関係者のみならず、無償化の対象になっていないブラジル人学校を支援する移住連の金朋央理事も駆けつけ発言した。金理事は「外すための方策でしかないという印象だ。日本社会での多様な教育を保障するうえで欠かせない外国人学校の存在が認められる社会、子どもの権利として無償化法が対等に認められる社会をつくれるよう、各省庁には対等に権利を認める判断をお願いしたい」と訴えた。

また、一橋大名誉教授の田中宏さんは「外すためではなく認めるために知恵を絞ってほしい。子どもたちを生でみて、そこにいる子どもたちを除くということが何を意味するのか考えてほしい」と話した。

そのほかにも、会場からは「一人ひとりの子どもの健全な発達のために給付される支援金に、なぜこのような格差が出るのか」 「制度設計するときに、各種学校である外国人学校の幼児教育施設は念頭にあったのか」「保育の実態をふまえ判断をするべきだ」などといったさまざまな質問や意見が飛び交った。

最後に、宋代表は「保護者として願うことは、対象として認めてほしいということ」としながら、政府の差別的な方針が、日本社会における差別を助長ししていると指摘。そのうえで、10月の施行まで、実際に現地を訪ね教育実態について、きちんとした検討をすることを、強く求めた。

(朝鮮新報社 韓賢珠)