14日、茨城、群馬、栃木、福島の朝鮮学校関係者や日本市民ら16人が衆議院第2議員会館(東京都千代田区)を訪れ、内閣府、文部科学省、厚生労働省に対し要請を行った。

幼児教育・保育の無償化制度から朝鮮幼稚園など各種学校認可の幼保施設が除外されている問題と関連し、先月以降、各地からの要請が続くなか、14日に茨城、群馬、栃木、福島の朝鮮学校関係者や日本市民ら16人が衆議院第2議員会館(東京都千代田区)を訪れ、内閣府、文部科学省、厚生労働省に対し要請を行った。

要請には、紹介議員として立憲民主党・堀越啓仁衆議院議員が同席。各府省の職員が応対した。

立憲民主党・堀越啓仁衆議院議員

冒頭、あいさつに立った堀越衆議院議員は、幼保無償化の財源は日本で住む人々が一律に負担する消費税であるため、当然すべての人に適用されるべきだと強調しながら、3人の子を育てる1人の親として「子どもが、自分のルーツで差別を受けたりすれば、自分の心が傷つけられる以上に苦しいもの」だと訴えた。そして各府省の職員に対し、日本で住むすべての子どもたちや保護者が安心して暮らせるように尽力してほしいと呼びかけた。

その後、「朝鮮学校の子どもたちの人権を守る会・茨城」(「守る会・茨城))、「群馬県朝鮮学校を支援する会」(「支援する会」)、「栃木ウリハッキョ友の会」(「友の会」)、茨城初中高、群馬初中、栃木初中、福島初中のほか、各学校オモニ会の連名で提出された要望書を、「守る会・茨城」の加藤薫事務局次長が読み上げた。

要望書を読み上げる「守る会・茨城」の加藤薫事務局次長

要望書は、朝鮮幼稚園を含む外国人学校が教育・保育の実態があるにも関わらず「各種学校だからというレトリックで排除されようとしているが、これは差別を隠す意図があるのではないか」と指摘。さらに、「朝鮮学校に対する高校無償化排除、地方自治体の補助金停止・削減につづき、幼稚園児までも排除する」国の方針が「民族教育に対する新たな差別政策を積み重ねることになる」と非難した。

そのうえで、▼各種学校も無償化対象と認め、朝鮮学校幼稚部のすべての園児たちの保育料を無償化すること、▼各種学校の保育施設を幼児教育類似施設などの新たな支援の対象として認めることを求めた。

各府省の職員たちに署名を手渡した

要望書は、茨城、群馬、栃木、福島、新潟、山梨から集まった合計3万4520筆の署名とともに提出された。

要請を受け、各府省の職員たちが発言した。

発言する職員

「内容自体は同様の要望を何回も受けとっており十分承知し部署にも共有している。(要請には)各地域の皆さんの気持ち、思いを受けとめる場所と捉えて毎回立っている。今日も皆さんの気持ちを聞きそれを部署で共有したい」(内閣府)

「今年度議論を始めた(調査)事業を含め、地域の方々の声を聞きながらやっていきたいと思っている」(文科省)

「皆さんの希望の声を聞く貴重な機会としてとらえている。省として持ち帰り共有したい」(厚労省)

各地から集まった思い

茨城初中高の高石典校長

れらの発言に対し、各地域から訪ねた代表たちが思いを述べた。

茨城初中高の高石典校長は、学びの保障を求め、本校の卒業生や在校生、教職員たちがこれまで絶えず声をあげてきたことに言及しながら、そのような流れのなかで、昨年新たに、幼保無償化制度から朝鮮幼稚園が外されたことについて「政府により子どもたちの学びを保障するための施策が施される毎に、朝鮮学校はその対象から外されている」と指摘した。また朝鮮大学校が対象外となる学生支援緊急給付金問題についても言及し、「コロナ禍のなか、朝鮮学校の保護者も同じように経済的損失を余儀なくされている。あってはならない差別だ」と述べた。そのうえで「朝鮮幼稚園の無償化を強く要請する」とした。

栃木初中オモニ会会長の李慶惠さん

「自己肯定ができる人に育てたい」「朝鮮人として育てたい」そんな気持ちで子どもたちを朝鮮学校に通わせていると語ったのは、栃木初中オモニ会会長の李慶惠さん。李さんは、国の公的制度から除外という言葉を突きつけられるたびに、子どもたちが委縮し差別に敏感になっている現状に危機感を示した。

「朝鮮学校に通う子どもたちは、日本で生まれ、日本で生きていく子たちだ。にもかかわらず、差別を受ける対象に自分たちがなっていると自覚せざるを得ない状況にありとても悲しい」

また昨年11月、外国人学校幼稚園の幼保無償化除外を反対し行われた「11.2集会&パレード」に参加した際、小さい幼稚園児たちの姿を見ながら「こんな幼い子どもたちが参加しなくてはならない集会とは、いまだかつてあったのかと強く思った」と李さん。

最後に、向かい合って座る職員たちに対し「これまで各地から朝鮮学校の保護者たちが何度も訪ねてきたと思うが、私たち保護者は、無償化が適用されるまで来ます。署名の中身にしっかりと目を通し、賛同者の思いが詰まっていることを自覚してください」と強く訴えた。

そのほかにも、日朝友好連帯群馬県民会議事務局長で、「支援する会」役員の宮川邦雄さん、総聯福島県本部の鄭希哲組織部長、茨城朝鮮学園理事の金玄虎さん、幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会の宋恵淑代表がそれぞれ発言。

これらの声を受け、各府省職員たちの回答は、既存の内容を繰り返し述べるだけだった。

最後にマイクの握った堀越議員は、「無償化からの除外、さらには新型コロナの影響も伴い、(朝鮮幼稚園に子どもを)預ける保護者の生活が厳しくなるなかで、教育の機会自体が保障されない状況に発展しかねない」と、改めて国に対し早急な是正措置の必要性を強調したうえで、多様性を認め合う社会を実現するために力を合わせていきたいと述べた。

(韓賢珠)