東京、神奈川、西東京、埼玉の朝鮮幼稚園に子どもを送る保護者ら約15人が、参議院議員会館で要請を行った

幼保無償化制度から朝鮮幼稚園が排除されていることと関連し20日、東京、神奈川、西東京、埼玉の朝鮮幼稚園に子どもを送る保護者ら約15人が、参議院議員会館で要請を行った。

政府側からは、内閣府、厚生労働省、文部科学省の担当者5人が参加した。

最初に、保護者代表が、衛藤晟一内閣府特命担当大臣、萩生田光一文部科学大臣、加藤勝信厚生労働大臣あての要請文を読み上げ、担当者らに手渡した。

要請文を読み上げる保護者代表

東京朝鮮学園幼稚班保護者会、神奈川朝鮮学園幼稚班保護者会、埼玉朝鮮学園幼稚班保護者会連名となる要請文では、「幼児教育・保育施設が、認可・無認可を問わずさまざまな設置形態をとって幼児教育・保育を行っている実態があるなかで、なぜ各種学校だけが名指しで無償化対象から除外され、認可外保育としても認められないのか」と批判したうえで、担当大臣らに対しそれぞれ「各種学校の幼児教育・保育施設を無償化対象と認め、朝鮮学校幼稚班のすべての園児たちの保育料を無償化すること」「各種学校の幼児教育・保育施設に対する国および地方自治体による保育料無償化のための財政的措置を講じること」を求めた。

保護者代表が要請文を手渡した

最初に発言した「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表は、公平性などの観点から対象施設を広げるための検討会が開かれた際、なぜ各種学校の幼児施設関係者が呼ばれなかったのかについて、担当者へ疑問を投げかけながら、「各種学校は検討すらされなかったのではないか」と指摘。

内閣府担当者は、「当時内閣官房で検討していたので承知していない」と答えた。

明るい未来、奪わないで

その後、集まった保護者たちは、朝鮮幼稚園が対象外となることへの憤りを涙ながらに語った。

「保護者の声を届けたくてやってきた」と声をつまらせながら話したのは、西東京第2初中の幼稚園に子どもを送る梁淳喜さん(36)。

涙ながらに発言した梁さん

梁さんは「私は3人の子どもがいる。

近くの保育園や幼稚園の選択肢もあったが、親も朝鮮半島にルーツがあり、私自身も幼稚園から大学まで朝鮮学校に通い、卒業後は朝鮮高校で教員もして、朝鮮人として誇りを持ちながら子どもにも生きてほしいと思い、幼稚園に入れている」としながら「幼保無償化の財源が消費税ということもあり、無償化の話が出たとき、子どもたちをもっといい環境で学ばせるチャンスが来たと思ったが、朝鮮幼稚園だけが除外される流れだと聞いた。

悔しいし、悲しくて、震えるほどだ。

なんでいつも私たちだけ除外されるのか」と溢れる涙をおさえながら声を振り絞った。

また梁さんは、先日、西東京第2初中の保護者たちが、朝鮮幼稚園への幼保無償化適用を求め、町田市に要請にいったことに触れながら「担当者たちからは、私たちの話を聞こうとする気持ちが感じられなかった。

保育の実態があるかどうか、定かではないというなら是非見に来てほしい」と話した。

保護者たちは、それぞれ子どもたちを連れ駆けつけた

埼玉初中幼稚班保護者の金淳華さんは、「娘が3人おり、上の二人が幼稚園に通っている。

私は在日朝鮮人として生まれ、子どもたちもこの日本社会で在日朝鮮人としてアイデンティティをしっかり持ち、自分を隠さずに堂々と生きてほしいと思い、朝鮮の言葉、文化、風習を学べる朝鮮幼稚園に送っている」とし「多種多様はいけないのですか。

私たちは納税義務もしっかりと果たしている。

いつになったら日本社会から差別がなくなるのか。

明るい未来が待っている子どもたちをどうか差別しないでください」と訴えた。

鶴見幼稚園保護者の李誠実さん(35)は、「今日一緒に参加したオモニたちの声を聞くだけで涙が止まらない。

私自身、幼いころから民族教育を受けていまに至る。

また日本の保育園で子どもを教える教師という立場でも働いてきた。

今回の幼保無償化は、多くのことを吸収する大切な時期に、子どもたちの学ぶ権利が同等でないということだ。

一体子どもの人権をどのように考えているのか」と声をつまらせながら、制度の見直しを求めた。

この日の要請中、担当者らの形式的な返答に、保護者たちは怒りをあらわにしていた

「なぜ除外されたのかについて、説明してくれたがまったく意味がわからない」 東京第1初中保護者の金純伊さん(40)は、担当者らの形式的な返答に、怒りをあらわにした。

「いまこうして子どもたちが横に座っている。

あなたたちは、こんなに小さい子どもを差別しているんです。

全体の幼児施設のうち、0.16%にしかならない各種学校を排除している。

そういう政策なんですよね?なぜそんなことできるのか。

いじめとしか思えない」 金さんの発言をうけ、文科省担当者が「絵画教室、英語教室、そろばん教室など、各種学校にはいろいろな学校があるので、判断に難しさがある」と答えると、参加者たちからは「実際に現場に足を運ばずに判断するのはおかしい。

ヒアリングもせずにすごく乱暴な制度だ」など批難が相次いだ。

制度の見直しを求める宋恵淑代表

この日の要請は、翌21日に行われる第11次中央オモニ大会に先立ち企画された。

オモニ大会に参加するため、大阪から上京した柳暎恵さん(51)も、関東のオモニたちを応援しようと要請を共にした。

担当者たちに対し、柳さんが「『関係閣僚会議で決まったことなので、これが法で、これが正しい。

すでに決まったことなので、あなたたちの子どもたちには配慮しない』と言っている。

そんなあなたたちは皆、子どものための仕事をしていますよね?」と話すと、一瞬会場は静まり返った。

柳さんは「あなたたちも、そろばん学校と幼稚園の形態を持っている施設が違うということは、わかるでしょう。

こんな小さな子どもたちを差別して、あなたたちは平気なんですか。

『閣僚が決めたからこうだ。

間違っていない』、そんな説明を聞きにきたわけではない。

皆さんの良心に訴えたい。

子どもたちのための仕事をしているのであれば、だれもが平等に学べるようにしてほしい」と、10月1日の施行を前に制度を根本から見直すよう強く求めた。

(韓賢珠)