大阪市役所での要請
国への働きかけ求める
市と府に対する要請は市役所、府庁でそれぞれ行われ、総聯大阪府本部の玄完植副委員長兼教育部長、金政義副委員長兼国際部長、女性同盟本部の申千玉副委員長をはじめとする活動家、大阪府内朝鮮幼稚園の責任者、「大阪保護者連絡会」のメンバー、「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の大村和子さん、同胞弁護士ら約20人が参加した。

要請ではそれぞれ、「大阪保護者連絡会」の李起守さん(39、生野初級所属幼稚班保護者)が松井一郎市長、吉村洋文知事宛ての要請文を読み上げ、府・市の担当者に手渡した。

要請文では「幼児教育・保育施設が、認可・無認可を問わず様々な設置形態をとって幼児教育・保育を行っている実態がある中で、なぜ各種学校だけが名指しで無償化対象から除外されるのでしょうか」と朝鮮幼稚園の幼保無償化からの除外を批判し、府と市にそれぞれ①各種学校の幼児教育・保育施設を無償化の対象として認めるよう政府に要請すること②保護者に対し独自の救済措置を講じることを求めた。

府への要請には府議会の野々上愛、山田けんた議員が同席した。
大阪府庁での要請

同日午後、府庁で記者会見が行われた。

会見には「大阪保護者連絡会」のメンバー、生野初級の梁学哲校長、「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の宇野田尚哉共同代表、同胞弁護士が参加した。

北大阪初中付属幼稚班に子を送る金亜紀さんは、朝鮮幼稚園に子どもを送る理由について「民族の言葉や文化、歌や踊りを学ばせ、民族のルーツを否定せずにありのままに育つ、安心できる場所。

自分を肯定的に受け止めて育っていくということが本当に大事だと思うから」とし、「朝鮮学校に通わせたいと思うだけで社会的な補償から切り捨てられていく。

何より子どもたちの学ぶ権利が否定されている」と幼保無償化除外を批判した。

宇野田共同代表は「補助金の問題、高校無償化の問題もいろんな理由がつけて行われたが、今回は『各種学校』という理由で排除されている。

各種学校と日本の幼稚園がどう違うのか。

政治的な意図に基づく排除を『各種学校』を理由に行っている」としながら、日本自治体の朝鮮学校に対する補助金打ち切りの「先駆け」となった大阪府および市は「この問題において責任が重い。

当然国にも言わないといけない。

もし国がやらないのなら府・市に(対応策を)よく考えてもらいたい」と述べた。

府と市の担当者らは要請に対し、内容を確認し共有すると返答した。

保護者らが涙の訴え

市、府への要請では、朝鮮幼稚園の保護者たちが府・市の担当職員らに涙ながらに思いを伝える場面があった。

2人の子どもを大阪第4初級所属幼稚班に送る姜未衣さん(33)は、2つの仕事を受け持ちながら生活する中で、忙しい時に近隣の日本人に子どもを預けることも多いと話す。

そんな日本人たちを子どもたちは「自分たちを守ってくれる存在」だと感じているとしながら、一方で国や行政の差別的な政策を子どもにどう説明すれば良いのか悩んでいると吐露する。

「それを説明することによって、子どもたちに差別されていると感じてほしくないし、そんなことを言いながら育てたくない」としながら、「子どもたちに、みんながあんたたちに『胸張って日本で住んで良いんやで。

日本で将来の夢をかなえて良いんやで』って言っていると言ってあげたい。

そういう社会を子どもたちに伝えたい」と話した。

要請で涙を流す保護者

金香喜さん(29)は市への要請で、抱きかかえていた子をあやしながら、職員に対し「今からこの子を床に落とせますか」と詰め寄った。

「この子は朝鮮人ですよ。

朝鮮学校を卒業した人の子です。

学ぶ権利ないんでしょう、生きる権利ないんでしょう。

そういう話を私たちは、しに来ている」と話し、「子どもは宝です。

私たちが死んだ後も社会を作っていくのが子どもたちなのに、何を思って無償化制度を作っているのか、本当にわけが分からない」「平等に同じ重さの命を大切に扱ってほしい」と熱を込めた。

李起守さんは、府の要請で要請文を読み上げ、「一言だけ良いですか」と言った後、しばらく言葉を詰まらせた。

頭に浮かんだのは朝鮮幼稚園に送る子どもたちの顔だったという。

しばらくして「われわれのかわいい子どもたちに、同等な権利をあげてください。

それだけです」そう声を絞り出し、要請文を職員に手渡した。

(金孝俊)