無償化適用の日まで

朝鮮学校を高校無償化制度の対象から除外した国を相手取り、各地5か所で行われてきた無償化裁判が終結した。2013年から約8年半の歳月を費やしてきた無償化適用を求める闘争は、司法の最後の砦である最高裁が各地の不当判決を支持した後も、一層活発に展開されている。各地の同胞や日本市民たちは、子どもたちの学ぶ権利が保障される日まで声を上げ、闘争を続ける決意を強く固めている。

いま通う子どもたちのために/大阪

大阪では、広島無償化裁判で原告敗訴の不当判決が確定(7月27日)して以降、初となる「火曜日行動」が3日に行われた。435回目となったこの日の「火曜日行動」には、感染症拡大による緊急事態宣言が発令(2日)される状況下でも同胞や日本市民の有志が集まった。

写真は10日に行われた「火曜日行動」(提供)

2012年4月17日を皮切りに毎週火曜、「朝鮮高級学校の『無償化』を求める連絡会・大阪」の主管のもと大阪府庁前で行われてきた「火曜日行動」は、大阪地域の同胞と日本市民が連帯する重要な場となっている。

今年5月のオモニ会総会を機に、大阪中高オモニ会の会長に就任した李福順さん(49)は、広島無償化裁判に関する最高裁決定のニュースに接し、オモニ会メンバーらとともに駆けつけた。

過去に東大阪中級のオモニ会会長を務めた際にも、各地の裁判に足を運び、現地のオモニ会とともに「諦めないで頑張ろうと連帯し取り組んできた」という李さん。今回の最高裁決定を聞き「やっぱりなと思う結果だった」と肩を落としながらも「火曜日行動」に参加した理由について、「声をあげることで、差別に屈していないという私たちの意志表示になる」と述べた。そのうえで「今後、私たち当事者が中心となって続ける運動の形を模索していかなくては」と前を見据えた。

また李さんは「国の政策、SNSでのヘイトスピーチもすべて差別の矛先が一番弱い子どもたちに向いているし、そのことを子どもたちは目の当たりしている」と辛い心情を吐露しながら「ウリハッキョに通う子どもたちが、自分たちが求めている権利は認められて当然なものだと、実感できるように、これからも権利を獲得するために声を上げ続けたい。また無償化から除外されるなかでもウリハッキョに通う子どもたちが、より良い環境で勉学に励むことができるよう、オモニ会活動を活発化させていきたい」と語った。

(韓賢珠)

知り、行動する/東京

6日、文科省庁舎前には「金曜行動」に参加する日本市民らが集まった。

6日、文科省庁舎前には「金曜行動」に参加する日本市民らが集まった。

東京での新型コロナ感染者数が拡大の一途をたどるなか、この日は「朝鮮学校『無償化』排除に反対する連絡会」のメンバーらをはじめとする日本市民たちが約30分間、サイレントデモを繰り広げた。

「金曜行動」は、朝鮮大学校の学生たちによって2013年5月31日にスタート。以降、毎週金曜日には、朝鮮高校を無償化制度の対象から除外した日本政府の不当な措置に反対し、朝大生や朝高生、保護者、教員をはじめとする同胞、日本市民たちが文科省前に集まりデモを行っている。昨年2月21日には200回目を迎えた。

「どれだけ叫べばいいのだろう~なんてきれいな音楽だろうと思い、参加者の方に『何をしているのですか?』と声をかけたことがきっかけですよ」

そう語るのは、渡辺マリさん(74、タンポポ舎)。脱原発を求めるデモを経産省前で行っていた時、道路の向こう側から聞こえてきた「声よ集まれ歌となれ」の旋律に導かれ「金曜行動」の現場に訪れた。当時は、「在日朝鮮人の問題を身近に考えたこともなかった。けれどその後、日本と朝鮮半島の近現代史を勉強するようになり、日本がどれほどひどいことをしたのかを初めて知った」という。

渡辺さんは、高校無償化訴訟がすべての地域で朝鮮学校側の敗訴で終結したことに対し「原発問題もそうだが、今の司法は権力の意向に絡めとられている」と指摘。そのうえで「司法には期待できない、こう言えば話は終わってしまう。だから参政権のある自分たちが日本の政治にしっかり参与し、現政権を倒すこと。そしてもう一つは、日本の加害の歴史について勉強することが必要だ」と強調した。

秋山真也さん(45)もまた、とあるきっかけによって「金曜行動」を共にするようになった一人。

「ハンセン病について調べていたとき、その療養所の患者のなかに在日朝鮮人がいることを知った。その方々が二重に差別を受けていると知り、関心をもつようになって。2017年のことで、その流れで高校無償化裁判に関するニュースも目にした。それが始まりです」(秋山さん)

以降、秋山さんは東京でも裁判が行われていると知り、集会や金曜行動に参加しはじめた。昨年には新たに「朝鮮学校を支える町田市民の会」のメンバーにもなったという。

「金曜行動」の参加者たちは約30分間、サイレントデモを繰り広げた。

秋山さんは「高校まで在日朝鮮人の存在やその歴史をちゃんと学んだことがなく、恥ずかしながらこれまで日本の朝鮮への植民地支配の歴史も知らなかった」と述べ、「けれどそのことを学んでいくうちに、テレビをつければ朝鮮情勢に関する偏向的な情報が飛び交っていて、日本社会に生きる日本人として危機感を持つようになった」と話した。そして「自分もそうだったように、大きなことはできなくても、誰かが知り、知ったその人が行動し、また身の回りの人たちに伝えていけば、必ず状況は変わる」と力を込めた。

(賢)

正当な権利、必ず/北海道

高校無償化、幼保無償化適用を求める街頭宣伝が7月31日にJR札幌駅近くで行われた。

高校無償化、幼保無償化適用を求める街頭宣伝が7月31日にJR札幌駅近くで行われた。朝青員をはじめとした同胞や北海道初中高教員とオモニ会役員、「北海道朝鮮学校を支える会」の日本有志ら約30人が参加した。

参加者たちは朝高生らによる手作りのプラカード掲げながら街頭に立ち、朝鮮学校に対する無償化制度適用を訴えた。

北海道での街頭宣伝は、2019年に北海道初中高の高級部生徒らが主体となり「火曜行動」という名称でスタート。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化して以降は、朝青北海道本部の主導のもと幅広い同胞や日本市民らがスタンディング形式で活動を行っている。

この日、参加者たちは気温33℃を超える猛暑の中、1時間にわたり朝高生らによる手作りのプラカード掲げながら街頭に立ち、朝鮮学校に対する無償化制度適用を訴えた。

また、7月27日の最高裁決定について、司法が差別を認めたことや、日本政府が今なお民族教育に対する差別政策を行っている事実を道行く人々にアピールした。

一方、「北海道朝鮮学校を支える会」では広島無償化裁判・上告棄却に抗議する声明を7月30日に発表。今後は英文でも声明を出し、今回の最高裁決定の不当性をより広く知らせていくという。

この日、参加者たちは朝鮮学校に対して無償化制度が適用されるその日まで声をあげつづける決意をいっそう強くした。

朝青北海道・札幌支部中央班の班委員を務める安翔大さん(25)は「無償化問題はウリハッキョで学び育ったわれわれ朝青員たちが先頭にたって解決すべき問題だ」としながら「日本政府による民族差別がなくなるまでたたかい、正当な民族教育権をかならず獲得したい」と力を込めた。

【朝青北海道】