幼保無償化からの朝鮮幼稚園排除と関連し、在日本朝鮮人人権協会が抗議談話を発表した。全文は以下の通り。

今年5月10日に「改正子ども・子育て支援法」が国会で成立し、10月の消費税増税と同時にいわゆる「幼保無償化」制度が実施されることになったが、法律上、各種学校の運営する幼児教育施設のみが制度の対象外とされた。

制度の対象には、認可施設である幼稚園、保育園、認定こども園に限定されず、広く認可外の施設も含まれているにも関わらず、全体の約0.16%に過ぎない各種学校認可の外国人学校の施設についてのみ制度の適用外としたことは、意図的な排除と断じざるを得ない。

朝鮮学校をふくむ各種学校の施設を制度の対象外とした理由につき、政府は「各種学校は、同法(学校教育法)1条の学校とは異なり、幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、また児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象とならない」としたが、これはなんの説明にもなっていない。「多種多様な教育」は積極的に推進されるものでありこそすれ、排除の理由になるはずがない。

日本も加盟する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の31回総会で採択された「文化的多様性に関する世界宣言」(2001.11.2)第2条には、「地球上の社会がますます多様性を増している今日、多元的であり多様で活力に満ちた文化的アイデンティティーを個々に持つ民族や集団同士が、互いに共生しようという意志を持つとともに、調和の取れた形で相互に影響を与え合う環境を確保することは、必要不可欠である。すべての市民が網羅され、すべての市民が参加できる政策は、社会的結束、市民社会の活力、そして平和を保障するものである。」とあるが、政府の説明は、この世界の潮流である精神と根本的に対立するものであり、排除ありきの後付けの理屈としか言いようがない。

これまでも日本政府は、たとえば国連の場で朝鮮学校への補助金不支給問題につき追及を受けたところ、「朝鮮籍を含め外国人の子供については、公立の義務教育諸学校について日本人児童生徒と同様に無償で教育を受けることができ、就学の機会の確保を図っている」、したがって差別などしていない、朝鮮人児童、外国人児童は日本の学校に行けばいいと居直るように繰り返している。このような政府のスタンスは、多様性を否定し、かつ子どもたちの肯定的な民族的アイデンティティ形成に欠かせない民族教育を否定する極めて暴力的なものである。

私たちは、あらためて「幼保無償化」制度からの外国人学校施設排除、そして在日朝鮮人の民族教育の場を切り崩していく政府当局の姿勢に対し強く抗議するとともに、「子ども・子育て支援の内容及び水準について、全ての子供が健やかに成長するように支援する」という法律の趣旨に立ち返り、朝鮮学校を含む外国人学校が運営する施設についても公平に制度を適用することを求める。

2019年9月11日