公明党所属の都議会議員たちが20日、東京第6初級を訪問し、同校付属幼稚班をはじめとする学校施設を見学した。

幼保無償化と関連し、公明党所属の都議会議員たちが20日、東京第6初級を訪問し、同校付属幼稚班をはじめとする学校施設を見学した。この日、同校を訪れたのは、都議会公明党の高倉良生都議(都議会公明党政調会長)、大松あきら都議の二人。同校の呉英哲校長、東京朝鮮学園の金順彦理事長、李英順部長、東京朝鮮学校オモニ会連絡会の厳廣子代表、「高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」の長谷川和男共同代表、「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表のほか、学校関係者や保護者らが同行した。

絵具でお絵かきをする児童ら

今回の訪問は、日本人支援者らの地道な活動により、10月30日、都議会内で「60万回のトライ」上映会が行われたことが発端となった。上映会当日は、全会派から都議会議員が参加。それを機に、今月4日から6日まで東京朝鮮学園をはじめとする関係者らが、都議会各会派らとの面談を行い学校訪問が実現した。

絵本の読み聞かせの時間

都議らは、2歳児、年少、年中、年長の4クラスを順に回りながら、リトミック授業や絵本の読み聞かせ、絵の具でおえかきをして遊ぶ子どもたちの様子をじっくりと見学。遊具や床暖房、トイレといった園児らがのびのびと育つために完備された施設の隅々まで見て回った。なかでも都議らは、クラスがあがるにつれ、みるみる朝鮮語を習得していく児童たちに感心しながら、都内にある各朝鮮幼稚園の状況や、同校が長年行ってきた地域での交流活動などについて、関係者から説明を受けた。視察は約1時間に及んだ。

保護者らと歓談する都議ら

その後、教員や保護者らと懇談の場がもたれた。

大松都議は、第一声で「すごく素晴らしい教育をしていると実感した」と述べ「何よりも、言葉、文化が多様で、幼少のころからそういう素地を身に着けられる(同校の)教育がすごく素晴らしいと感じた」と話した。また朝鮮幼稚園において、各地の教員らによる教育研究会などをもとに、現場を中心としたカリキュラムが組まれていることへ「仕組み的にも優れたもの」だと感想を述べた。

高倉都議は、「幼稚園から小学校高学年の子どもたちまで順に見たが、例えば外国語をどのように身につけるか考えたとき、朝鮮学校の朝鮮語習得過程に一番いい形があるのではないか。3ヵ国語や4ヵ国語の教育において、最も参考になるのではないかと思った」と話した。

それぞれの思いを述べる保護者達

「教育の面で差別があるようなことはあってはならないと改めて思った次第だ。難しい理屈はいらない。少しでも多くの人にこの姿を見てもらえれば、たちどころに理解ができるのではないか」(高倉都議)

つづいて、同行した保護者らが順に感想を述べた。

朝鮮幼稚園への幼保無償化の必要性を訴える尚明淑主任

年長クラスと初級部2年に子どもを送る洪愛舜さんは「幼保無償化の対象から外れたことは、お金の面だけでなくこんなに愛情をもって接してくれている先生や、子どもたちの幼稚園生活をすべて否定されたような気持ちになった。子どもに線を引くような状況は親としてどうしても受け入れがたい。これほどにも、きちんと環境を整えた幼児施設をみて、質が担保されていないと言えるのか」と話した。

連絡会の宋恵淑代表は「文部科学省や厚生労働省の幼保問題担当者らに一度朝鮮幼稚園を見に来てほしいという話を何度もしているが、なぜか見に来ていただけない。私からすれば、来られないんだと思う」とし「来てしまうと、今日議員の先生方もおっしゃられたように、素晴らしい施設があることを目の当たりにする。この施設を除外する理由が見当たらないはずだ」と強調した。宋代表は、現在、国が地域のニーズに合わせ財政支援をするとして、類似施設への検討を進めていることへ「国は地域へ責任転嫁している」と批判したうえで「検討の土台となる調査票は、東京都から朝鮮幼稚園には送られてこなかった。朝鮮幼稚園の存在そのものや、地域で役割をはたししているという実態、身近に国際交流をしている場があることを、都としてしっかりと国に申し入れをしてほしい」と強く訴えた。

幼稚園での日常には子どもたちの笑顔がはじける

また、東京朝鮮学園の李英順部長は「都が今後無償化の対象に検討している施設は、都が認定している幼稚園類似施設だ。その検討する施設のなかに、朝鮮幼稚園をはじめ外国人学校の幼稚園をいれていただきたい」と述べた。

これに対し、大松都議は「(都が認定した)幼稚園類似施設だけでなく、ほかにもたくさんの幼稚園教育をしている施設がある。そういったところがどうして除外されるのか問題意識を強く持っている。調査票すら送られていないということだが、そもそものところから差別している。教育は均等に差別なくやるべき大事な分野。国際的な素地をもち育つ子どもたちが、今後日本社会でどれだけ活躍するかを考えたとき、当然支援してもおかしくない」とし、今後、解決するための取り組みを進めていくと話した。

同校オモニ会の劉由紀会長は「5歳の息子に、この現状をどう説明すればいいのかずっと自問自答している。子どもたちや幼稚園のありのままの姿をみてほしいし、またいつでも足を運んで頂けたら」とし、今年、2歳児クラスに娘が入園した松本理沙さんは「本当にこの園に送って良かったなと思っている。子どもだけでなく私自身も通いやすい、携わりやすい幼稚園だ。それは朝鮮の素晴らしい教育文化が根付いているからだと思う」と話した。

リトミック授業のようす

同校付属幼稚班の尚明淑主任は「教育というのは環境がすごく大事。子どもたちは難しいことはわからなくても、祖父母や両親が学校をとても大事にしていることは、自分たちの肌で感じている。それを見て親御さんをはじめ地域の人々みんなが喜んでくれる。このことが、健全に子どもたちが育っている要因のひとつだと思う」とし「同じ社会に住む者として、朝鮮幼稚園に通う子どもたちが立派に育っている現実から目を背けないでほしい」と訴えた。

一方、日本政府は同日、来年度予算案を閣議決定。幼保無償化と関連し、文科省は、現在対象に含まれていない「幼稚園類似施設」への支援策など関連経費に二億円を計上。対象施設拡大へ乗り出した。

追加補助の対象は、「自然体験」、「遊び」など集団活動をする施設。来年度から、自治体を通じて対象施設に対する調査を行い、そのニーズが認められる場合に支援を講じる。しかしその対象は、各地方自治体が独自に支援している類似施設が基本となることから、朝鮮幼稚園など各種学校認可の外国人学校が含まれるかについては疑念が残る。

それに加え、20日の定例会見で萩生田光一大臣は、各種学校への支援の必要性について問う記者からの質問に対し「各種学校のなかにある幼児施設については、基本的には対象になっていないですけれども、そこを外れてですね、無認可保育所のような形で申請をしてくる場合もありますので、特定の国にかかわるから支援する・しないというのは文科省として考えていない。条件が整い地元の皆さんからの要請があれば、真摯に対応していきたいと思う」と、各種学校を前提としない支援の在り方を示唆している点も看過できない。

他方で、同日、日本弁護士連合会会長声明「外国人学校の幼児教育・保育施設を無償化措置の対象とすることを求める会長声明」が公表されるなど、制度の不公平性に対し、同胞のみならず各界層の日本市民から批判の声は高まっている。

(韓賢珠)