運動成果や決意を共有

「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」の2021年総会が12日にリモート形式で行われた。総会には各地の朝鮮学校支援団体代表や学校関係者らが参加。16地域の代表が活動を報告を行い、地域ごとの実情や運動成果、今後の取り組みに向けた決意を共有した。

無償化裁判の経験を次へ

昨年7月、広島無償化裁判において最高裁が、原告の主張を退けた一審、二審判決を支持し、上告を棄却。これにより、東京、大阪、愛知、広島、九州の全5カ所で行われてきた高校無償化裁判において、すべての原告敗訴が確定した。

総会の報告では、日本の司法が下した不当な判断に屈することなく、裁判闘争の経験を次につなげるための各地の活動が紹介された。

「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」の2021年総会が12日にリモート形式で行われた。

愛知では愛知無償化訴訟の敗訴確定を受け、昨年4月に「無償化ネット愛知」を「民族教育の未来をともにつくるネットワーク愛知 ととりの会」に改称。高校無償化、幼保無償化適用を求める運動のみならず、交換授業をはじめとした交流活動、県内朝鮮学校の教育環境整備などに力を入れ、幅広い取り組みを行っている。

また、裁判闘争が展開された地域では、無償化裁判記録集発刊の動きが活発化している。2月20日には「広島無償化裁判を支援する会」をはじめとした各団体が中心となり、「広島『無償化』裁判 闘いの記録―司法の有り様を問う」が発行された。愛知、大阪でも今年中の記録集発行を目指しているという。

「朝鮮高級学校無償化を求める会・大阪」の大村和子共同代表は「大阪地裁での勝訴は司法がしっかりと朝鮮学校の存在と価値、民族教育の意義が認められた判決だった。記録集を通じて大阪無償化裁判の意味を日本社会全体で共有していけたら」と話した。

苦境の中でも学びの保障を

新型コロナウイルス感染拡大以降、各地の朝鮮学校支援活動は著しく制限を余儀なくされている。そのような苦境の中でも各地の支援者たちは子どもたちの学びを保障するために継続した取り組みを行ってきた。

「北海道朝鮮学校を支える」では、昨年12月に学校関係者らとともに札幌市に対し北海道初中高への処遇改善を求める要請活動を行ったほか、朝鮮学校児童・生徒らを対象にした日朝友好促進交換授業をオンラインで開催。また、「支える会」役員の黒田敏彦さんが2年前にはじめた区役所前での街頭宣伝はコロナ禍でも地道に継続され、22年2月1日現在で79回を数えている。

各地の支援団体代表が地域の地域ごとの実情や運動成果について共有した

一方で、新たな取り組みについても数多く報告された。

日朝長野県民会議ではコロナ禍で学校バザーをはじめとしたイベントが軒並み中止となる中、2020年からキムチと衣類の販売事業を展開。20年度には100万円近くを売り上げるなど、苦しい運営を強いられている長野初中を財政的に支援している。

朝鮮学校と民族教育の発展を目指す会・京滋(「こっぽんおり」)では、京都・滋賀の朝鮮学校4校の保健室運営を支えるための「朝鮮学校・保健室基金」の寄付サイトを新たに立ち上げ、より幅広い支援を募集するシステムを整えた。

「こっぽんおり」の三嶋あゆみ事務局長は「21年度に各地のさまざまな朝鮮学校関係者や大学教授などを招いてオンライン講座も行うなど新たな取り組み積極的に行った。今後も地域でしっかりと連携を図るとともに、外部とのつながりも持ちながら多くの経験を学び実践につなげたい」と話した。

地域から運動を立て直す

「裁判闘争では世論を充分に喚起しきれなかったことをしっかりと反省し今後につなげなければならない。幼保無償化や高校無償化、各種補助金支給など正当な権利を獲得するためには、地域から運動を立て直し、大きなうねりを起こしていくことが大事ではないか」

東京地域を代表して報告した「朝鮮学校『無償化』排除に反対する連絡会」の長谷川和男共同代表は、参加者たちに向けてこのように問題提起をした。

東京では20年9月の「だいろく友の会」結成に続き、昨年10月には「東京朝鮮第4幼初中級学校を支援する会」が発足された。長谷川共同代表によると今後、都内すべての朝鮮学校において支援組織の発足を目指しているという。

各地の支援団体代表が地域の地域ごとの実情や運動成果について共有した

一方、九州・山口では福岡県朝鮮学校支援する会、朝鮮学校を支援する山口県ネットワークをはじめとした諸団体により「朝鮮学校無償化実現・福岡山口連絡協議会」が2月20日に発足した。福岡地域の報告では、各地の朝鮮学校支援団体との連携強化や幼保無償化、高校無償化をはじめとする朝鮮学校への保障制度の適用実現、財政支援および世論喚起のための活動を展開していく計画が共有された。

福岡山口連絡協議会の中村元氣共同代表は「朝鮮学校の子どもたちを支援する活動に終わりはない。財政難や児童・生徒数が減少していく中、朝鮮学校をいかに継続させていくかが課題だ。朝鮮学校が日本社会において当たり前の存在になるよう、これからもしっかりと支援していきたい」と力を込めた。

(丁用根)