〈幼保無償化〉「気持ちが1%も届いていない」/膨らむ行政への不信

幼保無償化が、朝鮮幼稚園を含む各種学校が対象から除外されたまま10月1日からスタートした。

この問題と関連し、「第11回中央オモニ大会要請団」や「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園大阪保護者連絡会」(以下、「大阪保護者連絡会」)が内閣府や各自治体をはじめとする行政機関に対し、要請活動を行っている。

しかし、要請に応対した各行政機関の担当者の多くは「内容を共有する」と返答を繰り返すのみで、具体的な行動は見られない。

幼いわが子に対する差別的施策への怒り、悲しみの大きさと、行政側の「冷淡」な対応の大きな隔たりから、朝鮮幼稚園の保護者たちの間では行政に対する不信感が広がっている。

「すごく温度差を感じた1日だった」。

「第11回中央オモニ大会要請団」による要請(9月26日)を終え、そうこぼしたのは東春初級附属幼稚班の保護者である曺幸子さん(36)。

自身の子は年長でもうすぐ卒園するが、「家族のような」学校の子どもたちの笑顔を奪いたくないと、要請に臨んだ。


9月26日に行われた「第11回中央オモニ大会要請団」による要請
要請で母親たちは感情を露わにし、涙をぬぐい、怒りで手を震わせながら、担当者たちに気持ちを伝えていた。

しかし「内閣府や文科省の人たちは真逆ですごく冷淡で、淡々としていた」と曺さん。

その温度差に「真剣には考えていないんだろう」。

そう感じたという。

要請に参加した奈良朝鮮幼稚園の朴錦蓮教諭(26)も同じような感覚を抱いていた。

「こちらは100%の気持ちを伝えているのに、返答は『受け取ります』だけ。

答えが具体的じゃない。

正直、要請を通じて気持ちが伝わったとは1%も感じなかった」と漏らす。

その態度に「自分たちがしなければいけないことは、もっと大きいものなんだと感じた」。

入札室

象徴的だったのは、9月18日に大阪市役所で行われた「大阪保護者連絡会」による要請だ。

市役所に到着後、要請団が案内されたのは「入札室」と書かれた一室。

椅子や机も用意されず、要請は立ったまま行われた。


「入札室」で行われた大阪市への要請
金香喜さん(29)は「この部屋に大阪市の在日朝鮮人に対する態度が出ていると思う」と怒りを示し「自分たちに学ぶ権利がないならば、テーブルを置いて堂々とそう言ってほしい」と訴えた。

応対した2人の担当者らは「ここ2,3年はこの部屋を使っている」と釈明したが、約30分の要請中、要請団の言葉をメモしようともしなかった。

その姿に要請団のメンバーはますます怒りを募らせていった。

「大阪保護者連絡会」の李起守さん(39)は「自分たちがいくら熱い気持ちを伝えようと、メモも取らずに、それをどうやって伝えるのか」と憤った。

また、内閣府ホームページに掲載されている「幼児教育・保育の無償化に関する自治体向けFAQ」では「地域や保護者のニーズに応える幼児教育類似施設であって、自治体が積極的に支援を行うようなものについては、国としても、地 方と協力してどのような支援ができるか検討」していくとし、文科省も幼保無償化の対象から外れた幼児教育・保育施設について「現時点では、地方と協力して支援の在り方を考えている」としている。

しかし、埼玉初中保護者連絡会と附属幼稚班の保護者がさいたま市に対し、制度適用外となったことへの救済措置を求めた要請(9月19日)では、同市の子ども未来局長は「国に準じて」各種学校の幼稚部に対する救済措置は考えていないと発言。

国の“方針”と食い違いを見せている。


幼児を抱きかかえ要請に臨む朝鮮幼稚園の保護者(9月18日、大阪市役所)
埼玉初中附属幼稚班保護者の金淳華さん(42)はそのような状況から「声が届いているという感覚は全くない」と吐露する。

それでも「私たちが学生の時は定期券の問題を、オモニたちが何年も闘い権利を得た。

高校無償化、幼保無償化も、何年かかっても適用されることを信じて、声を上げ続けなければいけない」と前を向いた。

そして「これまで同胞が獲得してきた権利も、同胞たちだけの力で得たものではなかった。

行政への信頼感は決して高くないが、理解してくれる市民たちの力を借りながら、声を届けていきたい」と語った。

ブラジル人学校からも

一方で、各種学校として制度の対象外とされた朝鮮学校以外の外国人学校の幼稚園からも、制度に対する疑問の声が上がっている。

在日ブラジル人学校を代表する団体であるNPO法人「在日ブラジル学校協議会(AEBJ)」は、ブラジル人学校が抱える問題などを話し合うフォーラム(9月28~29日、静岡県浜松市)で、各種学校のブラジル人学校も無償化の対象とすることなどを求める宣言を採択した。

国が支援を謳う「全ての子ども」からこぼれ落ちた外国人の子どもたち、そして、幼保無償化の財源である消費税増税分を担う日本社会の一員である外国人の保護者ら、当事者の声が届かないまま、幼保無償化は今日、スタートした。

(金孝俊)