先生と遊ぶ広島初中高付属幼稚班の園児たち(写真は6月1日撮影)

除外から8カ月

幼保無償化制度から朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校の外国人学校が除外され、8カ月が過ぎ、新しい年度を迎えた。いうまでもなく、幼保無償化除外問題は高校無償化除外問題と同じく、単にお金の問題ではない。「すべての子どもたちの健やかな成長を支援する」という理念を掲げた制度から、子どもたちが理不尽にも仲間外れにされ、傷つけられているという、尊厳にかかわる問題だ。また、子どもたちの多種多様な学びの場が否定されているという、学ぶ権利にかかわる問題でもある。ただ、現実として保護者たちには幼保無償化制度と同時にスタートした消費税増税による家計の負担増の痛みが重くのしかかっているのも事実である。

朝鮮幼稚園にとっても増税の影響は甚大だ。朝鮮幼稚園では、園児たちの転倒防止のためコード類を固定したり、角に誤ってぶつかっても大事にいたらないよう緩衝材を巻き付けたりといった安全性確保のための対策を十分に施しているが、そうした資材なども当然、増税の影響を受けている。そこに新型コロナウイルス感染拡大による影響が加わった。収入の減少や失職といった深刻な状況に陥っている保護者も少なくない。幼稚園運営の一助となるイベントの開催も難しい状況だ。幼保無償化から除外され心が傷つけられたばかりか、未来への不安が募る毎日。しかし、見渡してみると、前向きな兆しもあるのだ。

粘り強い運動の賜物

幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外に対し、日本の国内外から多くの批判が集まっており、昨年12月から始められた幼保無償化適用を求める署名は、短期間で延べ46万を超える賛同署名が集まった(5月末時点)。

また、幼保無償化施行後、これまで支給してこなかった朝鮮幼稚園の保護者に対する支援策を模索し、実際に補助金などの支給を新たに開始した自治体も複数出てきている。

さらに、日本政府が幼保無償化対象外施設に対し、来年度以降支援策を講じるために今年度行う自治体委託型の「調査事業」に対する公募が5月までに行われたが、自治体が国に「忖度」して朝鮮幼稚園を「調査対象」としてみなさないのではないかという私たちの不安や懸念に反し、朝鮮幼稚園の園児が居住する18の自治体が朝鮮幼稚園を「調査事業」の対象とし、公募に手をあげたのだ。自治体にとって、「調査事業」への手上げは義務ではない。しかもこのコロナ禍、手上げは自治体にとってさらに「仕事が増える」ことにつながる。にもかかわらず、18もの自治体が手上げしたのは、私たちの粘り強い運動の賜物であると同時に、幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外がいかに不当で理不尽な問題であるのかということの証左だと感じている(※この「調査事業」、問題点が多々あるのも事実。よりよく知るための基本情報や問題点を簡潔にまとめてみたのでご参照いただきたい。)。

コロナ禍の中での自粛期間、朝鮮幼稚園では全国にひろがるネットワークという強みを活かし、遊びにも行けず友だちにも会えず寂しい思いをしている園児たちのために、各地の朝鮮幼稚園の先生たちが出演する手遊び歌や体操の動画の数々を配信してくれた。各地の先生たちの楽しい歌や見事な演技、ウリマルに、子どもたちはもちろん、保護者も元気づけられた。朝鮮幼稚園のありがたさを改めて感じ、日本にあるほかの幼児教育施設のお手本にもなる朝鮮幼稚園の活動をより多くの人たちに知らせていきたいと思った。そのためにも、不安ばかりにとらわれず前をむいて、幼保無償化の適用を求める運動をよりいっそう盛り上げていきたいと思っている。

未来は創り出せる。子どもたちの明るい未来のために、いま一度奮起を!

(幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会代表)