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〈幼保無償化〉“一緒じゃなくても一緒だよ”/茨城初中高、高3生徒全員で絵本制作

朝高生の思い込めた手づくり絵本

絵本「いっしょじゃなくてもいっしょだよ」(2020年3月1日発行)

茨城初中高の朝高生たちが幼保無償化をテーマに絵本を制作した。

3月1日に発行される絵本「いっしょじゃなくてもいっしょだよ」は、昨年10月、朝鮮幼稚園40園を含む外国人学校幼児施設を対象外にしたまま実施された幼保無償化制度について、その現状と不当性を考え、朝鮮幼稚園についてより多くの人々に知ってもらおうと制作された。

絵本は、卒業を控える高級部3年生たちが企画。作画は、同じく同校45期卒業生の姜理奈さんが担当した。

「ヘバラギプロジェクト」の名目で、日本語の授業を通じ進められたこの絵本制作。今年の卒業生は、全員が、初中高の12年間の過程を共に学んだということもあり、従来、授業の締めくくりとして行ってきた実技発表会の形式ではなく、「愛する母校を守るための未来志向型の活動をしてみよう」と同プロジェクトを立ち上げた。

1月末から制作をスタート。キャラクター設定とストーリーの作成(第1段階)、絵コンテンツの作成(第2段階)、絵本制作(第3段階)、プロモーション(第4段階)と、段階ごとの計画を立てる一方で、「バックグラウンドとアイデンティティについて再考察すること」や「今

高3生徒らは、3月の卒業式まで絵本を発行することを目標に、昨年11月末から制作をスタート。キャラクター設定とストーリーの作成(第1段階)、絵コンテンツの作成(第2段階)、絵本制作(第3段階)、プロモーション(第4段階)と、段階ごとの計画を立てる一方で、「バックグラウンドとアイデンティティについて再考察すること」や「今後ウリハッキョ卒業生としてどう生きるか」について、その決意を絵本に表そうと試行錯誤を重ねたという。

物語は、ゾウ、ヒツジ、パンダなどいろんな動物が通う「ひまわり幼稚園」のバスが、いつも止まるはずの、ウサギのハナちゃんの家を通りすぎるところからはじまる。

「先生、ハナちゃんが乗ってないよ」「先生! バスを止めて!」

「あいつはふつうじゃないから、この幼稚園にはいらないんだ」

騒がしかったバスの中は、しーんと静まり返り、みんなうつむいてしまいました。(同絵本より参照)

指導した日本語科目の担当教諭・李英福教員は「今年の卒業生は全員が同校で12年間学びを共にした特徴ある学年。学校創立55周年、茨城民族フォーラム、60周年、65周年と彼らの成長過程にはウリハッキョの歴史が刻まれている。ヘバラギプロジェクトは、そんな彼らが自分たちの学びとウリハッキョを愛する気持ちを、一つの形として表現する試みでもあった」と振り返り、「絵本の完成はスタートに過ぎない。これからの彼らの成長と活躍が、さらなる大きな道へとつながることを心から願っている」と話した。

茨城初中高63期卒業生から児童たちに絵本がプレゼントされた(写真=同校提供)

恩師である李教員の誘いを受け、自身の絵が役に立てればという思いで作画協力したと語った姜理奈さん(37)は制作期間、「生徒たちの意見を反映する」ことを一番に心がけて、「絵や雰囲気、強調するポイント、色味」などを考え、李教員と随時連絡を取り合い準備したという。また登場するキャラクターの名前など、絵本には風刺をしている部分があったため、「第3者が読んでも嫌みがないことが大事だと思い、絵は可愛さを保ち、読み手が不快にならないように意識した」と述べた。

姜さんは「私は国際結婚をしたが、今や国籍がどうこうと線引きする時代から、純粋に人と人との関係が重要視される新しい価値観の時代に移行していると思う」としたうえで、外国人学校幼児教育施設を対象外としている幼保無償化について「同じ人なのだから未来ある子どもたちのことを考えて欲しい」と訴えた。

また今回、共に絵本を制作した同校63期の生徒たちに向けて「卒業後は、在学時よりも自分たちのアイデンティティについて考える機会がとても多いと思う。お互い、茨城ハッキョの卒業生として頑張りましょう」とエールを送った。

高級部3年の姜陽慧さんは「幼保無償化除外という不当な差別に対し、抗う手段としてプロジェクトをはじめたが、絵本が完成した今思うのは、卒業生や両親、出版社に至るまで周囲の多くの人々のサラン(愛)があり、この日を迎えられたということ」と感想を述べながら「僕たちの闘いは、誰かを倒すためのものではなく、サラン(愛)を形にしていくことだと再確認した。今後、ウリハッキョや同胞社会の明るい未来のために、歩みを共にしてくれる人々の輪が少しでも広がるように、絵本が活用されることを願う」と語った。

これと関連し2月22日、県内の学齢前児童を対象に、対象児童とオモニたちの交流の場として毎月1回開催される「ヘバラギ教室」で絵本の読み聞かせが行われた。当日は、同校の初級部低学年生たちも参加。この日参加した児童たちには絵本がプレゼントされた。

李英福教員によれば、今後、絵本の内容が収録されたQRコードの普及、高級部生徒らによる児童たちへの読み聞かせなど、実践活動も積極的に行っていく予定だという。

(韓賢珠)

お知らせ

・絵本に関する問い合わせ:茨城初中高(TEL 029-241-3535)

・以下QRコードより絵本の内容が確認できます。(注記:(1)転載時は必ず発行元を明記すること、(2)無断での販売は禁止します)